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 第13回
子どもが蹴ったボールがもとで亡くなった!
親の監督責任の範囲はどこまであるの?
弁護士/司綜合法律事務所パートナー 中込 一洋
最高裁は,親の責任を否定
  Aさん(当時85歳)は,自動二輪車を運転して小学校の校庭横の道路を進行していたところ,その校庭から転がり出てきたサッカーボールを避けようとして転倒して負傷し,その後死亡しました。その遺族らは,このサッカーボールを蹴ったBくん(当時11歳)の父母に対して,損害賠償を請求しました。
  大阪高平成24・6・7判時2158号51頁(以下,原判決と言います)は,Bくんは責任能力がないため責任を負わないが,その両親らには監督者責任がある(民法714条)として,約1180万円の支払を命じました。
  未成年者は,他人に損害を加えた場合において,自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは,その行為について賠償の責任を負いません(民法712条)。これは,子どもを守るために必要なことです。しかし,子どもの加害行為によって損害を受けたときでも,被害者を保護すべき場合があります。そこで,民法714条1項は,未成年者の監督義務者である両親が損害賠償責任を負うという原則を定めました。原判決は,この条文に基づいて,Bくんの両親の責任を認めたのです。
  ところが,最判平成27・4・9判時2261号145頁(以下,本判決と言います)は,原判決を破棄し,Bくんの両親の責任を否定しました。その理由は,民法714条の責任を負わない例外事由(@監督義務を怠らなかったとき,または,A監督義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき)のうち,@に該当すること,すなわち,Bくんの両親は「民法714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかった」ということにあります。
  本判決は,子どもに対する親の監督責任の範囲について具体的に判断した初めての最高裁判決です。
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