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 第15回
損益相殺って,どんなこと?
弁護士/司綜合法律事務所パートナー 中込 一洋
損害賠償から労災給付を控除するの?
  ソフトウエア関係のY会社に勤務していたシステムエンジニアのAさん(20代半ば)は,過度の飲酒による急性アルコール中毒から心停止になって死亡しました。その相続人である父親Bさんは,長時間の時間外労働などによる心理的負荷の蓄積による精神障害を発症し,正常な判断を欠く状態で飲酒したことが原因であると主張して,Aさんを雇用していたY会社に対して損害賠償を請求しました。
  最大判平成27・3・4判タ1414号140頁(以下,本判決といいます)は,約2800万円の損害賠償請求権の発生を認め,その「元本」からAさんの父親が受け取った労災給付約1000万円を控除し,残額約1800万円及びこれに対する年5%の割合による遅延損害金の支払いを命じました。
  この労災給付のように,被害者が損害を受けたのと同一の原因によって利益を受けた場合に,その利益を損害から控除することを「損益相殺」といいます。
遅延損害金とは,債務を負担している人(債務者)が,期限までに弁済しなかったとき(履行を遅滞したとき)に負担する損害賠償金のことです。金銭債務については、法定利率によることが原則とされています(民法419条)。
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