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民法709条は,「故意又は過失」によって他人の権利・利益を侵害した者に,損害賠償責任を負わせています。過失とは,例えば自動車を運転中に脇見をして追突した場合のように,不注意で「うっかり」としてしまう行為のことです。他人に害を加えないように注意することが一般的に期待されるため,きちんと注意をすれば権利侵害等を予見し,回避することができたときには,過失があるとして損害賠償責任を負わされるのが原則です。
しかし,火事については,この原則は適用されません。
失火ノ責任ニ関スル法律(以下,失火責任法といいます)は,失火者に「重大なる過失」(以下,重過失といいます)があるときに限って損害賠償責任を負うと定めています。つまり,不注意で火事になってしまったときは,普通の過失(これを軽過失ということもあります)があるだけなら(重大な過失がなければ),損害賠償責任を負わないのです。
平成27年8月,いわゆるゴミ屋敷から出火し近隣住宅が全半焼したという事件があり,これに関連して,失火責任法がテレビ番組や新聞などで取り上げられました。
なぜ火事について軽過失がある人が責任を負わないのか,それでは被害者が保護されないではないか,と疑問を感じた人もいると思います。
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