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役員退職慰労金からのアプローチ  勇退時退職金編 
一級ファイナンシャル・プランニング技能士/株式会社シャフト 服部 泰彦
退職金の適正額からアプローチする方法が一般的だが…
  役員退職慰労金について先月は死亡退職金について解説しましたが、今月は勇退時退職金について解説いたします。死亡退職金と事業保障資金(先々月紹介)はどちらも支払事由が死亡により発生するため、準備する生命保険も定期保険等の死亡保険金で対応できます。
  しかしながら、勇退時退職金の準備については基本的には資金積み立てが必要となり、死亡退職金の準備とは対応可能な保険商品が異なることから、中小企業の経営者の中には死亡退職金は準備されていても、勇退時退職金は準備されていない方がよく見受けられます。その大きな理由の一つとして、勇退時退職金を積み立てるだけの資金的余裕がないことが考えられます。
  では、そのような状況において、どのような効果的なアプローチが考えられるでしょうか。
  勇退時退職金の準備における有効なアプローチ話法としては、従来から「役員退職慰労金の適正額」が多数活用されてきましたので、まずは役員退職金の適正額について考えてみましょう。その適正額は、一般的に次の算式で計算されるものです。
 役員退職慰労金の適正額=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(+功労金)
  しかしながら、上記の計算式による役員退職慰労金の適正額とは、税務上「いくらまでなら損金算入が許されるか」という一般的に認識されている上限の金額であり、決して必要準備額のことではありません。提案に際してはこの点をしっかり理解しておきましょう。
  企業が1期の事業年度で高額の損金を発生させることができる方法は、役員退職慰労金しかありません。このため四半世紀前のバブルの頃には、自社株対策(高額の役員退職慰労金の支給で自社株の評価を引き下げ、これにより将来発生する相続税負担の緩和等を図る方法)のために上記の適正額を遥かに上回る役員退職慰労金を支給し、所轄の税務署から損金算入を否認されるような事例も数多くありました。
  税法上は適正額であるとは言え、上記の計算式で算出される金額は相当な高額になります。例えば35歳で会社を起業して、70歳で勇退予定とします。そして勇退時(70歳)の最終報酬月額は100万円、功績倍率は3倍とした場合の役員退職慰労金の適正額は次のようになります。
 ≪計算例≫
 役員退職慰労金の適正額=100万円×35年×3倍=1億500万円
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