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遺留分の“落とし穴”をご存じですか?
一級ファイナンシャル・プランニング技能士/株式会社シャフト 服部 泰彦
  遺留分とは、民法で定められている相続人の権利のことで、相続人が最低限相続できる一定の財産が規定されています。ところが、遺留分に関して誤解されているケースも多く、顧客への生命保険提案を左右することもありますので、その方が遺留分について正しく理解されているかどうかを把握することは重要です。
遺産分割の場面で多い「誤解」とは
  例えば、次のような事例で考えてみましょう。
事例
被相続人となる方:母68歳(父は既に他界)
推定相続人:子3人(そのうちのA(長男)は母と同居)
相続財産: 母の自宅(実家)7,500万円……小規模宅地等の特例適用後は1,500万円
現預金4,500万円
【遺産分割における相続人の状況とAの思惑】
(1) 子3人のうち長男A(既婚で家族あり)は母と同居。次男Bと三男Cも既婚でそれぞれ自宅を所有しそこに居住。長年にわたって介護状態にある母の面倒は同居のAの妻が見ていた。なお、母の介護をAの妻に任せっきりにしているBとCに対して、Aは良い感情を持っていない。
(2) 父の相続時に母が父の全ての財産を相続したが、「配偶者の税額軽減の特例」の適用で相続税の納付の必要はなかった。
(3) 自宅は一等地にあり(Aは母と同居するも自宅の名義は母)、Aは母の相続時に自分が自宅を相続するつもりであるため、相続税の納税資金について心配していた。
(4) Aは金融機関主催の相続対策セミナーに参加し、自分が自宅を相続した場合は小規模宅地等の特例が適用でき、80%の評価減を受けられることを知る。また、遺留分についての留意点も理解できたと思い、Aの弟であるBとCには遺留分相当額を相続させればよいと考え、(5)のような遺産分割案を考え、母に説明して了解を得た。
(5) Aの考えた遺産分割案
母の自宅⇒Aが相続(評価額1,500万円
現預金 ⇒A:2,500万円(Aの妻による母の介護を考慮して)
⇒BとC:各1,000万円
遺産分割の対象財産額:6,000万円
[自宅1,500万円+現預金4,500万円]
A、B、C各々の遺留分相当額=6,000万円×1/2×1/3=1,000万円
これによりAは「この分割内容なら、BとCの遺留分は侵害しない。また、A、B、Cともに多少の税負担は必要(A:80万円、BとC:各20万円)なものの、概ね相続の懸念は解消できる」と考えた。
※小規模宅地等の特例を適用した評価額
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