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相続放棄の説明の際に見落としがちな点
ご存じですか?
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 服部 泰彦
  生命保険営業の現場では、「生命保険はみなし相続財産に該当しますので、相続放棄を行っても問題なく受け取れます」――というように「相続放棄」の部分だけを強調するような提案が中には見受けられますが、それには留意する必要があります。なぜなら、営業員が相続放棄について正確な知識を持たずに顧客へアドバイスすると、とんでもない誤解を与えてしまうことがあるからです。今回は相続放棄について解説します。
意外と多い「相続放棄」
  相続が発生した場合、相続人は被相続人(亡くなった方)が残した財産に対して、次の三つのうちのいずれかの方法を選択することができます。
@単純承認 プラスの財産(現預金や土地の所有権等の権利)はもちろん、マイナスの財産(借金等の負債など)があってもそれもすべて受け継ぐ……相続する
A相続放棄 プラスの財産も、マイナスの財産も、一切受け継がない……相続しない
B限定承認 被相続人の債務がどの程度あるか不明であるが、プラスの財産が残る可能性があり、相続人が相続によって得たプラスの財産を限度に被相続人の債務の負担を受け継ぐ……いわゆる条件付き相続
  人口動態統計によると、平成25年度の死亡者数は126万8,436人です。1年間にお亡くなりになった方、つまり被相続人の数です。国税庁の調査によると、平成25年度に相続税の納税を要した被相続人の数は5万4,421人です。相続税を納めるほどの相続財産があった被相続人の割合は約4%、相続発生件数全体から見るとわずかということになります。
  では、相続放棄や限定承認をした人はどのくらいいるのでしょう?
  平成25年度の裁判所の司法統計「家事審判・調停別新受付数−全家庭裁判所」によれば、「相続の限定承認の申述受理」は797件であり、対する「相続の放棄の申述の受理」はなんと17万3,166件にもなっています。この二つの数字から見ると、相続放棄の件数は相当に多く、一方、限定承認についてはごく少数に留まっていることがわかります。大差の理由の一つとして、相続放棄は相続人単独でできるのに対し、限定承認は相続人全員でしなければならないという手続きの面倒さもあるでしょう。
  このように選択する人が多い「相続放棄」ですが、単純に被相続人の借入金の返済義務の相続を回避するためだけではなく、相続人の間での揉め事から逃れたいという目的の方も多いようです。
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