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中小企業には、創業期・成長期・安定期・成熟期などのステージがあります。先月は、「事業保障資金」について各ステージの特性に応じた生命保険の必要保障額を紹介しましたが、今月は、「経営者の退職金準備」についてステージ別に提案時の留意点を紹介します。
まずは創業期において経営者の退職金準備を行う場合です。創業期の法人は赤字またはほとんど利益が出ていない状態が一般的なので、この場合の退職金は死亡退職金が前提であり、万一の際、残された経営者の家族の生活保障のためとなります。ただし、設立後の期間が短く、損金算入が認められる退職金は少額になることに留意が必要です。
なぜなら、損金算入できる役員退職金の適正額の算定方法は、一般的に最終報酬(給与)月額方式を採用する法人が多いからです。その計算式は次のとおりです。
役員最終給与月額×役員在任年数×功績倍率
仮に法人設立後3年で経営者が亡くなった場合の退職金額を考えてみましょう。最終給与月額が100万円、功績倍率が3倍とすると、死亡退職金額は900万円です。退職金とは別に弔慰金を支給した場合、弔慰金の非課税額は業務上死亡で最終給与月額の36ヶ月分、業務外死亡で最終給与月額の6ヶ月分ですから、仮に業務外死亡だとすると、非課税枠を最大限に使っても弔慰金額は600万円、死亡退職金との合計金額は1,500万円です。
当然、経営者の年齢や家族構成によっても異なりますが、一般に1,500万円では「遺族生活資金」としては不足すると考えられます。
しかし経営者は、損金算入できる範囲の退職金額のことまでは考えておらず、法人契約の生命保険に加入して死亡退職金を準備すれば、万一の際は死亡退職金が家族の生活資金に活用できると考えます。そうなると、経営者が法人成りする前に個人契約していた生命保険はもう必要ないと考えて解約しよう、あるいは個人契約から法人契約に名義変更しようと考える経営者もいるかもしれません。
そのような場合は、創業期の死亡退職金は最低限(税金面だけでなく財務面からも)の準備にとどめ、可能な限り個人契約の保険は継続して、法人契約・個人契約の両方で遺族生活資金を確保することをお勧めすべきです。
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