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 第9回
事業承継対策の提案例@
相続発生に備えた、社長の相続人からの金庫株プラン
株式会社ライフUP 代表取締役 橋口 慎也
  本連載「財務改善に役立つ法人保険」は、来月をもって終了となります。今月から2回にわたって集大成として「事業承継対策の提案例」を取り上げます。
  歴史を積み重ねて利益が蓄積された会社で、オーナー社長の場合は、社長が自社株の大半を保有しているケースが一般的です。配当・値上がり益を目的に売買されることのない非上場企業の株式は、支配権奪取を目的に第三者が購入することはあるかもしれませんが、通常は社長の同族関係者、従業員持ち株会の者しか購入を望みません。そこで、現在と変わらず会社の支配権を維持しつつ、値上がりしているのに流通できない自社株を現金化する方法があるとしたら、まず間違いなしに社長は興味を持たれるでしょう。本稿は、オーナー社長が所有する自社株を現金化するために実際にどのような提案をしたか、事例を通してご紹介します。
金庫株購入資金を導き出すために、まずは自社株の評価
  Y社は東京23区にある運送会社で、業歴は25年、年商は12億円。社長は75歳で、年収は4,500万円(給与所得は4,000万円)。後継者は長男の専務です。社長の推定相続人は、同居の妻と長男、別居してそれぞれ他の会社に勤めている長女・次男・三男の計5人です。
  Y社の資本金は5,000万円で、取引相場のない株式の判定で「中会社の中」にあたります。
  現時点における社長の希望は次の3点の実現でした。
  @生前退職(勇退)時の退職金原資がほしい。
  A相続発生時には死亡退職金原資がほしい。
  B相続開始後、会社による相続人からの自社株買取り(金庫株)の原資がほしい。
  因みに、現在加入中の生命保険は、法人契約と社長個人の契約がそれぞれ1つずつありました。
契約者 被保険者 受取人 保険種類 保険金
Y社 社長 Y社 終身保険 5,000万円
契約者 被保険者 受取人 保険種類 保険金
社長 社長 定期保険(85歳満期) 1億円
  希望@の「生前退職時の退職金原資」と希望Aの「相続発生時の死亡退職金原資」は、法人契約の終身保険(解約返戻金または死亡保険金)と自己資金で賄えるので、希望Bの「相続開始後、会社による相続人からの自社株買取り(金庫株)の原資」について検討、提案していくことにしました。
  金庫株を購入するための利益の蓄積(剰余金分配可能額)が現在どのくらいあるのか、不足分についてはどのような方法で蓄積していくのがベストなのかを提案するために、社長にお願いして決算書を見せていただき、剰余金分配可能額をチェックしました。Y社は好業績で現在2億円の剰余金分配可能額が蓄積されていました。
  Y社の自社株評価は、資本金5,000万円(額面500円×10万株)で、類似業種比準価額での1株あたりの株価は7,300円。純資産価額での1株あたりの株価は8,200円(含み益に対する法人税等38%控除後)。Y社は中会社の中ですので、1株あたりの株価は7,525円(=7,300円×0.75+8,200円×0.25)となりました。
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