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 第10回
事業承継対策の提案例A
社長が元気なうちに自社株を譲渡して、
第2の人生を楽しむための原資を捻出
株式会社ライフUP 代表取締役 橋口 慎也
  本連載の締めくくりとして、オーナー社長が所有する自社株を現金化するためにどのような提案をしたか、事業承継対策の提案事例のその2をご紹介します。
金庫株買い取り資金準備に生命保険を提案
  東京郊外にあるA社は、海洋測定機器製造・販売会社で、年商は10億円。社長は65歳で、役員報酬は2,500万円(給与所得は2,000万円)です。奥さまとご長男はA社の専務に就任しており、後継者であるご長男に、10年後に社長の椅子を譲りたいと考えられています。
  社長の希望は、勇退時に次の2点を実現することです。
  @高額でなくていいので、役員退職慰労金が欲しい
  Aそのかわり、社長自身が保有している自社株を現金化したい
  現在、A社の法人契約の生命保険は、社長が被保険者の養老保険で、保険金額は3,000万円です。勇退退職金の原資は、この養老保険で賄えます。そこで、社長が保有されている自社株の現金化について提案していくことにしました。
  まず、社長が保有するA社の自社株(非上場株式)を譲渡(売却)する相手を見つけなければなりません。考えられるパターンは、次の4つです。
譲 渡 先 自社株の評価方法 根  拠
同族個人へ
(例えば後継者)
会社規模等により、類似業種比準方式、純資産価額方式、両方式の併用 相続税財産評価基本通達による
同族以外の個人へ 配当還元価額 相続税財産評価基本通達による
同族法人へ
(一般的には金庫株)
小会社の評価方法、類似業種比準価額50%+時価純資産価額50% 所得税基本通達59−6による(H12.12)
同族以外の法人へ 小会社の評価方法、類似業種比準価額50%+時価純資産価額50% 所得税基本通達59−6による(H12.12)
  譲渡の際の株価の評価方法については通達によって定められており、また、譲渡先や譲渡のタイミングなどの違いによって、社長が取得する売却益に対する課税が、みなし配当課税のみ、譲渡所得課税のみ、その両方といった具合に相違します。
  今回は、社長個人から同族法人であるA社へ自社株の譲渡――金庫株の買い取りをご提案しました。社長は会社発足時に自社株を取得して以降、新たな自社株は取得していません。株価の評価方法は、譲渡する社長が中心的同族株主であり、通達の定めにより小会社としての評価方法(類似業種比準価額×50%+時価純資産価額×50%)を適用します(次ページの図「相続税法上の純資産価額と時価純資産価額」参照)。
※時価純資産価額は、時価評価上の含み益から法人税等相当額38%の控除はしない。
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