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第2回
相続対策、老後の生活資金対策
などにも活用される信託制度
―財産管理制度としての信託の利用―
関戸国際税務会計事務所 代表/税理士 関戸隆夫
  読者のなかには、信託を「投資のためのもので保険とはあまり関係のない金融商品」と考えている方も多いのではないでしょうか。一般になじみのある投資信託は不特定多数の投資家を対象とした金融商品ですが、信託は財産管理制度としての側面も併せ持っています。子どもや孫への財産移転、あるいは自らの不動産を担保に老後の生活資金を確保するなど、相続対策や老後の生活資金対策においても信託は有効活用されており、生命保険や年金保険と同様の経済効果が期待できることもあれば、あるいは信託と保険を組み合わせることで最適な提案ができることもあります(注)。本稿では、財産管理制度として信託がどのように利用できるかを見ていきたいと思います。
(注)  財産を預かって運用するという点では、信託と生命保険等は共通していると言えます。また、実際に「生命保険契約に基づく死亡保険金請求権」を信託財産とするオーダーメイドの生命保険信託商品が生命保険会社と信託銀行によって共同開発されており、例えばプルデンシャル生命が三井住友信託と「安心サポート信託」を、第一生命がみずほ信託と「想いの定期便」を共同開発しています。これらの商品の具体的な内容については稿を改めて紹介することとします。
■  はじめに
  信託制度は、もともとイギリスにおける財産管理制度として発祥し、その後アメリカにおいて発展したといわれています。日本においては、従来から貸付信託や投資信託、証券化ビークルとしての信託というように金融商品として発達してきた経緯がありますが、近年の高齢化社会とも相俟って、財産管理制度としての有用性が見直され注目されてきています。
  信託の機能は、一般には以下の3つがあります。
@財産管理機能 本人の代わりに専門家である受託者へ財産の管理・処分を委ねることができる。
A財産隔離機能 信託財産の名義が委託者から受託者へ移転し、委託者の倒産による影響を受けない。また受託者の債権者は信託財産に強制執行等が禁止されている。
B財産の転換機能 小口の金銭を合同したり、大きな信託財産を小口化することができる。不動産などの信託財産を受益権化することができる。
  このうちの「財産管理機能」と「財産隔離機能」により、委託者の財産を保護し、委託者が死亡した後でさえも委託者の意思を尊重した形で財産管理を行うことができる点は他の制度にみられない特徴といえます。これは信託制度の本質といっても過言ではありません。以下、このような財産管理信託としての利用例の一部を紹介することとします。
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