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第5回
事業承継における信託の活用
関戸国際税務会計事務所 代表/税理士 関戸隆夫
  事業承継で悩む経営者は、事業を承継する者がいない場合はもちろん、承継する候補者はいるものの、意中の後継者へ経営権を委ねるにはまだ経験が伴っていないことから、現時点で手が付けられないような場合、また、複数の法定相続人の中で特定の者に経営権を承継していく場合の相続の問題など悩みは様々です。
  こうした事業承継の場面においても信託のスキームを利用することで、生前に確実かつ安定的に将来の事業承継を確定することができるようになる可能性があります。今回は、事業承継における信託の活用、特に「遺言代用信託」による事業承継について解説していきます。
■  遺言代用信託による事業承継
  (1)遺言代用信託の基本的な仕組み
  事業承継における信託の利用で知られているのは、「遺言代用信託」による方法でしょう。
  信託法は、「委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託」を定めており(信託法90@一)、これを一般に「遺言代用信託」といいます。遺言代用信託では、委託者は自己を受益者とする自益信託を設定し、その後、当初受益者が死亡した時点で他の者が当該受益権を取得することを、予め信託契約で定めることができます。
  このような遺言代用信託は、前回までに縷々るる述べてきた高齢者や障害者の財産管理のための信託などにおいて活用されることを想定して創設されたものですが、事業承継の場面においても有用です。
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