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第9回
海外資産と信託(1)
信託における相続税・贈与税の納税義務者
関戸国際税務会計事務所 代表/税理士 関戸 隆夫
  ここ数年、為替相場の影響や相続税の一部増税といった国内の政策的動向も相俟って、日本人富裕層が海外資産を保有するケースは増えているといわれます。
  そこで、今回から数回にわたり、これまで紹介してきた信託という仕組みを使って海外資産を保有する場合に、主に税務上の取扱いについて整理していきたいと思います。第1回目の今回は、簡単な事例を用いて海外資産に対する日本の相続税法上の納税義務の取扱いを説明し、信託を用いた場合の基本的なポイントについて解説を加えることとします。
■  海外資産の保有と相続税の問題
  日本の相続税法においては、相続税・贈与税の納税義務者は、@被相続人・贈与者の居住地、A相続人・受贈者の居住地および国籍、B財産の所在地(国内か国外か)といった要素に基づいて決定することとされています(相法1の3、1の4、2の2)。そのため、従前の法律では日本の居住者が、自身の国外財産について外国籍の相続人又は受贈者へ相続等をすることで相続税・贈与税が課されないという仕組みがありました。
  例えば、仕事の関係で家族と共に海外に渡ったAは、海外で不動産を購入し、そこで長く暮らした後に帰国し、現在は日本で生活をしているとします。Aの子供Bは海外で教育を受け、現在は外国籍を取得しており、帰国はせず引き続き海外で生活をしているとします。このようなケースにおいてAの海外不動産を子Bへ贈与する場合、従来の相続税法では日本での贈与税は課されないこととされていました。
  しかし、この仕組みを利用して課税を免れるケースが相次いだことから、平成25年度税制改正において相続税法が改正され、日本に住んでいない相続人等のうち日本国籍を有しない者は、日本に居住している者より相続又は贈与を受けた場合には相続税又は贈与税を納める義務があるものとされました(下図参照)。
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