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営業職員の説明が不十分で損害賠償?
―説明義務違反の轍を踏まないために―
内幸町法律事務所 弁護士 松谷 美和
  保険募集の際には、保険契約の内容等についてお客さまにきちんと説明しなくてはならないことは認識していても、実際に十分な説明が行われているでしょうか。
  保険の内容等については、基本的にはパンフレットや設計書等の書面に記載されているかと思いますが、書面の記載内容ではなく、営業職員による説明が不十分であるとして、営業職員及び保険会社に対する損害賠償請求が認められた最近の判例をご紹介します。
■  夫の介護がきっかけで4つの保険に加入
  今回取り上げる判例(東京地裁平成24年3月29日判決)の事案を簡単に説明すると、以下のとおりです(登場人物はすべて仮名)。
  花子は夫婦で土産物店を営んでいましたが、夫の太郎が平成20年8月にがんで死亡してからは、長男の一郎(すでに故人)の妻である松子と店を続けていました。なお、花子と太郎との間には、ほかに長女の竹子がいます。
  太郎は平成20年1月ころから末期がんで入院生活を送るようになり、花子は太郎の姿を見るにつけ、もしも将来、自分が介護が必要な状態になったときに、娘の竹子や嫁の松子に迷惑をかけたくないと思うようになりました。
  同年6月ころからY保険会社(以下「Y生命」)の営業職員である愛舞子(以下、舞子)が太郎の見舞いに訪れるようになり、そうした中で、花子は舞子の勧誘により、Y生命の保険に加入しました。
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