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説明したにもかかわらず、契約が無効に?
―お客様の十分な理解を得ることが保険募集には必要―
内幸町法律事務所 弁護士 松谷 美和
  保険募集の際、保険契約の内容等について、書面や口頭でお客様にきちんと説明したつもりでも、もしかするとお客様は十分に理解されていないかもしれません。
  今回は、平成18年とやや古いものになりますが、営業職員は保険契約の内容について説明したとされたものの、保険契約の内容についてお客様に錯誤(誤解)があったとして、保険契約が無効とされた判例をご紹介します。
■  満期になった養老保険の代わりに、終身年金保険に加入
  今回取り上げる判例(岡山地裁平成18年11月30日判決)の事案の概要は、以下のとおりです(登場人物はすべて仮名)。
◇初回訪問時
  花子(当時74歳)は、Y保険会社(以下「Y生命」)の養老保険(満期保険金額300万円)に加入しており、平成15年12月に満期を迎えることから、Y生命の営業職員である愛舞子(以下「舞子」)と夢咲子(以下「咲子」)は、満期保険金支払手続のために、同月17日、花子宅を訪問しました。なお、舞子は、後輩の咲子を指導する立場にありました。
  満期保険金支払請求の手続の処理を終えた後、舞子は、花子に終身年金保険への加入を勧めました。
  舞子は、10年の保証期間付の終身年金保険の概略を口頭で説明しましたが、花子は考えておくと言っただけで、舞子らは、その日は花子宅を辞去しました。
◇2回目の訪問時に本件年金保険に加入
  舞子らは、平成15年12月22日に花子宅を訪問。花子は、一時払い保険料を支払い、終身年金保険に加入しました(以下「本件保険」)。
本 件 保 険
保険種類 10年保証期間付定額型即時終身年金保険
効力発生日 平成15年12月22日
年金支払事由発生日 平成15年12月22日
年金額 18万円(隔月3万円×6回)
保険料 293万3730円
契約者 花子
被保険者兼年金受取人 花子
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