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第1回
保険料負担者と名義人の仲たがいから裁判に
―名義保険はトラブルに巻き込まれるモト!―
一般社団法人ソーシャルバリューファーム 代表理事 右田 修三
  保険募集の際、申込書の記載事項は正確さが求められます。しかし実際には、生命保険料控除を受けられない、あるいは保険料を支払う資力がないなど様々な理由から、親が保険料を負担しているのに、子が書類上の契約者になっているような名義保険もなかにはあるようです。契約者が保険料負担者でない場合、のちのちトラブルになる恐れがあるという教訓となる事例です(わかりやすくするため、判例に基づいたフィクションになっています)。
■  娘に保険をプレゼントしてあげるつもりが「名義保険」に
  事案を簡単に説明すると、以下のとおりになります(登場人物はすべて仮名)。
  春子さん(60歳代)には、美鈴さんという娘がいます。美鈴さんは結婚を機に実家を出て、夫と新居を構え、舞ちゃんという娘を出産しました。春子さんにとって舞ちゃんは初孫に当たります。春子さんにとって目に入れても痛くないほどかわいい舞ちゃんが幼稚園に入園したのを機に、春子さんは美鈴さんに生命保険をプレゼントしてあげることを思いつきました。そして以下の契約形態のY生命の生存給付金付生命保険(以下、「第1保険」という)に加入しました。
契約者 被保険者 受取人
美鈴 美鈴
  それから1年後、第1保険と同じ契約形態で、春子さんは美鈴さんにもう1つ同じ保険(以下、「第2保険」という)をプレゼントしました。
  第1保険、第2保険とも、申込書の保険契約者の氏名欄には、美鈴さんの氏名が記載されていましたが、住所欄には春子さんの住所が記載されていたうえに、春子さんの住居である旨を示す「春子方」との付記もされていました。もちろん保険証券は、春子さんが保管していました。
  保険料の支払いについては、第1保険は保険契約締結時に春子さんが一時払で払い込んでいました。その保険料預り証には美鈴さんの住所として、春子さんの住所が記載されていました。第2保険のほうは春子さんの希望で月払の集金となり、集金場所は保険契約者の住所として記載された春子さんの住所に指定されていました。そして春子さんは、第2保険の第2回分以降の保険料を訪ねてきた集金人に払っていました。
  このままでしたら何の問題もなかったのですが、数年ののち、春子さんと美鈴さんの仲が険悪になってしまい、親子なのに疎遠な関係になってしまいました。
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