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 特 集 
「役員退職慰労金」を極める!
【上級編】 その4
1級ファイナンシャルプランニング技能士/株式会社シャフト 代表取締役 吉光 隆
【みなし退職の判例における「否認と認容」】
(1)  納税者がみなし退職を否認された判例
  以下の判決は、納税者が前回の連載(上級編その3)で述べた法人税基本通達9−2−32を形式的な基準で適用して敗訴した事例です。この他にも大阪高裁:平成18年10月25日判決など類似判例が数多くあります。
判決の要旨
1  通達の取扱いを形式的に適用した納税者の主張が排斥された事例
●  東京高裁平成17年9月29日判決(訟務月報52巻8号2602頁)
  法人が、代表取締役を退任して非常勤の取締役に就任した者について、その役員報酬の額を半減した上で退職金を支給した。そして、同人の分掌変更は、法人税基本通達9−2−32の(3)に掲げる事実に該当し、その地位、職務の内容が激変し実質的に退職したと同様の事情にあるとして当該退職金の額を損金に算入し、法人税の確定申告書を提出した。
  課税庁は、前代表者が代表取締役を辞任する前後でその担当業務の内容に大きな変化はなく、代表取締役を辞任した後も法人の経営上の意思決定において中心的な役割を果たしていること、また、役員報酬の減額についても、減額後も新代表取締役とほぼ同額である上、他の非常勤役員への報酬を大幅に上回っていることから、実質的に退職したと認めることはできないとして、当該退職金の損金算入を否認する法人税の更正処分を行った。
  裁判所は、前代表者が行っていた業務の専門性、専属性、新代表者の業務知識、業務の内容、調査臨場時の立会いの状況や業務についての説明内容、代表取締役辞任後の業務実態などを詳細に列挙し、前代表者は代表取締役を辞任した後も新代表取締役に経営を任せておらず、従前と同様に、又はそれに近い程度に、自ら法人の経営の中心となっていたというべきであって、そうすると、前代表者の地位又は職務の内容が激変し、同人が法人を実質的に退職したのと同様の事情にあると認めることはできないから、前代表者の退職慰労金は賞与として取り扱われるべきであり、損金の額に算入することは認められないと判示し、納税者の請求を退けた。
(裁判所ホームページ『裁判例情報』より)
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