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 特 集 
第5次医療法改正後のドクターマーケット開拓
【第1回】第5次医療法改正と医療法人制度の概要
税理士/宮田昇税理士事務所 所長 宮田 昇
  生命保険のセールスパーソンのみならず、我々税理士業界も含めありとあらゆる業種にとって垂涎の的であるドクターマーケット。まさに、顧客あるいは顧問先になってもらいたい業界のNo.1といっても過言ではないと思います。ただ、ドクター業界は何となく敷居が高そうな感じがあり、気軽には踏み込んでいけないイメージがあるのではないでしょうか。そこで、今回はドクターという人種を少しでも身近に感じていただけるよう、ドクターの方たちが抱えている相続や医業経営上の悩みアレコレとその解消法について、3回にわたってご紹介していきます。
●目次●
1. 医療法人制度の在り方について
(1)  医療法人制度の概要
(2)  医療法人の数と基本分類
(3)  持分の定めのある社団医療法人
2. 第5次医療法改正について
(1)  第5次医療法改正の基本方針
(2)  第5次医療法改正のドクター業界へ与える影響
3. 経過措置型の持分の定めのある社団医療法人と基金拠出型医療法人との違いについて
(1)  経過措置型の持分の定めのある社団医療法人のメリット・デメリット
(2)  基金拠出型医療法人のメリット・デメリット
(3)  残余財産の帰属先
(4)  経過措置型医療法人の社員が出資持分の払い戻しを受けた場合
(5)  経過措置型医療法人の出資の評価法
1.医療法人制度の在り方について
  既に医療法人化されているドクターだけでなく、現在は個人開業医あるいは勤務医だけれども将来的には医療法人化を目指しているドクターにとっても、今後の「医療法人制度の在り方」は、大変気になる問題です。つまり、既に医療法人化されているドクターにとっては、医療法人制度が今後どのように改正されるのかという不安(とくに第5次医療法改正前に設立された、現在の経過措置型社団医療法人)。そして将来的に医療法人化を検討している個人開業医や勤務医にとっては、医療法人化することのメリット・デメリット――これらを知る上で、まずは医療法人制度の概要について触れていきます。
(1)  医療法人制度の概要
  医療法人とは、「病院」、「医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所」又は「介護老人保健施設」を開設しようとする社団又は財団をいい、医療法に基づいて設立が認められた特別法人です。その設立に関しては、都道府県知事の「認可」を受ける必要があります。
  また、複数の都道府県にまたがって病院や診療所等を開設する医療法人を設立するときは、厚生労働大臣の認可を受けることが必要です。会社法に基づき設立される株式会社等と異なり、設立のプロセスが大きく異なります。
  ただ、いわゆる法人税法上等の税務的な取り扱いは、株式会社等と一部を除きほぼ同様に取り扱われます。
ワンポイント・アドバイス
  株式会社等を設立する場合と異なり、医療法人の設立には上述のとおり都道府県知事の認可が必要ですが、その設立申請について、都道府県庁は随時受付を行っているわけではありませんので注意が必要です。詳しくは、都道府県庁のホームページで申請のタイムスケジュールを確認しておく必要があります。参考までに申し上げますと、毎年3月と9月に受付をするところが多いようです。さらに申請をしてから都道県知事の認可が下りるまで約半年近く時間がかかります(地域によって差があります)。
(2)  医療法人の数と基本分類
  医療法人は、大きく「財団医療法人」と「社団医療法人」の2つのタイプに分類されます。人が一定の目的に資するために財産を寄付(無償譲渡)することによって設立されるのが財団医療法人です。一方、人が社員になることによって設立されるのが社団医療法人で、「出資持分の定めのある社団医療法人」と「出資持分の定めのない社団医療法人」の2つに分類されます。
(3)  持分の定めのある社団医療法人
  財団医療法人は、設立に必要な資産を財団に寄付(無償譲渡)したことになりますので、退社時にその出資割合に対して、出資持分の払い戻しを請求することはできません。
  社団医療法人のうち、出資持分(以下、持分)の定めのある社団医療法人は、財団医療法人の場合と異なり、退社時にその出資割合に対して出資持分の払い戻しを請求することができますが、持分の定めのない社団医療法人は、財団医療法人同様、退社時にその出資割合に対して持分の払い戻しを請求することはできません。
ワンポイント・アドバイス
  数的に最も少ない財団医療法人は、一般的に社団医療法人より公共性、公益性が高く、さらには、役員給与にも上限が設定されているなど運営上の規制も厳しいことから生命保険の提案は難しいところが多いようです。
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