>  今週のトピックス >  No.2404
金融所得課税、死亡保険金にかかる非課税は、
社会保障・税一体改革大綱でこう変わる!?
  平成24年2月17日、社会保障・税一体改革大綱が閣議決定された。相続税の税率の引き上げや基礎控除の圧縮については今週のトピックスNo.2386で浅野宗玄氏が述べられているが、ここでは「金融所得課税」と「死亡保険金にかかる非課税」について記したい。
■ 金融所得課税
1)損益通算の範囲の拡大を検討
  上場株式の配当と株式等の譲渡所得の損失の損益通算については、すでに平成21年以降の申告分離課税選択分に限って取扱いを可能とする対応が行われているが、社会保障・税一体改革大綱では、さらに公社債等に対する課税方式の変更および損益通算の拡大の検討が謳われている。
具体的には、以下のような項目についての検討が行われるのではないかと推測される。
   @ 債券の利子・譲渡所得を申告分離課税化
   A 債券の利子については申告不要制度を残し、利子に関しては源泉徴収を維持する
   B 利払い日の保有者が法人、個人等の属性にて源泉徴収の有無を判定する
   経過利子は80%でなく100%授受
   現在は経過利子1万円の場合、8千円を経過利子相当分として旧保有者(売却する投資家)に支払う。
   経過利子を税相当額も含め取得費に算入
   C 債券の利子・譲渡所得について損益通算可能
(現行は債券の利子は損益通算ができず、譲渡所得は非課税)
   D 債券の償還差損益については譲渡所得とみなす(現行は雑所得)
   E 債券の利子・譲渡所得について特定口座で取り扱えるようにし、損益通算後の年間所得に対して源泉徴収する
   F 割引債の発行時源泉徴収を廃止する(現行は発行時に18%徴収)
   G デフォルト債の損失は譲渡損失とし、損益通算が可能
などが主な検討項目となるであろう。
2)金融所得間の課税方式の均衡化
  上場株式の配当・譲渡所得等に係る10%軽減税率を、平成26年1月から20%の本則税率に戻し、非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得・譲渡所得等の非課税措置(いわゆる「日本版ISA」)を平成26年1月から導入する。日本版ISAとは、投資信託や上場株式等から生じる所得への課税は、毎年100万円3年間で最大300万円までの投資から得られる値上がり益や配当・分配金が最長10年間非課税となる制度をいう(なお、当制度については平成23年度税制改正で導入が決定済みである)。
■ 死亡保険金にかかる非課税限度額
  現行は500万円にすべての法定相続人の数を乗じた金額となるが、改正案としては500万円に法定相続人のうち未成年者、障害者又は相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者の数に乗じた金額となる。
  例えば、下図のような家族構成で、生命保険に加入している場合、
  「現 行」 500万円×4人=2,000万円
  「改正案」 500万円×2人=1,000万円
  となる(対象は妻と子3)。
  よって、今後は死亡保険金にかかる非課税制度の活用を提案するときは、将来の税制改正も視野に入れながら、提案することが重要となる。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2012.04.05
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