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「望ましい働き方ビジョン」を厚労省が公表
  3月27日に厚生労働省が公表した、「望ましい働き方ビジョン」とは、非正規雇用問題に総合的に対応し、労働者が希望する社会全体にとって望ましい働き方を実現する為の指針をとりまとめたものです。非正規雇用で働く労働者の雇用安定や処遇の改善に向けて、公正な待遇の確保に必要な施策の方向性を理念として示してあります。
概要は次の通りです。
◆ 施策の基本姿勢
1.  労働者の希望に応じて、期間の定めのない雇用、直接雇用等、どのような働き方でも均等・均衡等公正な処遇の確保が雇用の在り方として重要である
2. 労働者の士気・能力向上により、企業の生産性の向上、日本経済社会全体の発展に繋げる
3. 正規雇用の働き方を見直すことで、正規・非正規の連続性を確保する
4. 政労使の社会的合意のもと、社会全体で強力に取り組みを推進する
◆ 施策の具体的方向性
若者に雇用の場を確保
学校における、働くことやルールの意識づけ・啓発、キャリア教育の一層推進
新卒者支援体制の構築
求職者支援制度の活用、企業の雇い入れ支援強化
ニート対策の強化 など
正規雇用・無期雇用への転換促進
外部労働市場や同一社内での正規雇用に向けた支援の充実
短時間労働者の正社員転換の推進
派遣労働者の派遣先での無期直接雇用の推進
有期労働契約の無期雇用化の促進等
中立的な税・社会保障制度の構築
厚生年金、健康保険の適用範囲拡大
配偶者控除、社会保険の被扶養者認定の仕組み(103万、130万円)の見直し
社会保障、税の所得再分配機能の強化
公正処遇の確保・不合理格差の解消
事業主への助成、労働関係法令等遵守の周知・指導等の着実な実施
最低賃金の引上げ など
均等・均衡待遇の効果的促進
「同一価値労働、同一賃金」の考え方を尊重しつつ、日本的な「均衡」によりアプローチ
派遣労働者の均衡に配慮
職業キャリアの形成の支援
企業内訓練の強化
新卒者支援体制の構築
キャリア・コンサルティングの活用促進
ジョブ・カード制度の活用 など
雇用のセーフティネット強化
雇用保険の適用拡大、求職者支援制度の円滑な実施
雇用調整助成金の活用
福祉施設との連携による早期の再就職支援  など
  このビジョンにおいて「非正規雇用」とは、パート・アルバイト・派遣労働者等、いわゆる「正社員」以外の雇用形態を指しています。近年、若年層を中心とする労働者の非正規雇用状態の長期化は深刻化する一方です。このような現状を改善するべく公表された今回のビジョンですが、そもそもの雇用の担い手である企業(事業主)への負担軽減施策が疎かである点は否めません。特に、健康保険・厚生年金の適用範囲については、範囲を拡大しすぎると企業の社会保険料負担の増大を招き、逆に雇用促進に結びつかない恐れがあります。併せて、雇用促進に向けた新たな助成金創設等、企業への手厚い経済的な助成も必要であると考えます。
参考:厚生労働省「望ましい働き方ビジョン」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025zr0-att/2r98520000026fpj.pdf
  
野上 幸彦 (のがみ・ゆきひこ)
野上社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士
オーディオメーカー、建設コンサルティング、フードサービス業界での人事・営業職を経験を経て、平成19年に野上社会保険労務士事務所を設立。多業種経験を活かした人事・労務コンサルティングを行っている。
nogami-sr0021@st-paul.gr.jp
  
  
2012.04.09
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