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EPA介護福祉士候補者に配慮した国家試験
● 初の国家試験、合格率は37.9%
  3月28日、EPA(経済連携協定)によって来日した介護福祉士候補者による、最初の国家試験の合格者が発表された。
  受験したのは、初年度受け入れとなる平成20年度にインドネシアから来日した人々(他にEPA前に国内就業経験があるフィリピンからの来日者が1名)で、介護福祉士の受験資格である3年の実務経験を経たことで受験が可能となった。
  結果は、受験者数95名に対し、合格者は36名、合格率にして37.9%となっている。全体の合格率は63.9%なので約1.7倍の開きはある。だが、同じくEPA来日者の看護師国家試験の合格率に約8倍の開きがあったことを鑑みると、初年度来日者としては高い数字と見ることもできる。
  ただし、来日当初から毎年受験できる看護師候補者に比べ、介護福祉士候補者は滞在期間4年で実務経験の3年を差し引くと受験機会は原則として1回のみとなる(帰国後、短期滞在ビザによる再受験は可能)。これに対し、政府は3月11日の閣議決定で、一定以上の得点水準がある者について追加的に1年間の滞在期間の延長を表明した。
  また、来日後6ヶ月間は日本語研修にあてられているが、平成23年度からは来日前の6ヶ月間(フィリピンからの来日者は3ヵ月間)に現地における日本語研修もプラスされた。国家試験においては、難解な漢字へのふりがな付記や疾病名への英語の併記などといった試験表記に見直しが行われている。さらに、受け入れ施設等への配慮から、介護保険の基準改定では、EPA来日者も人員配置基準に組み込むことも示された。
● EPAは看護師・介護福祉士不足を解消する?
  こうした施策が次々と打ち出された背景には、外国人による日本語の国家試験ハードルが極めて高く、協定締結国との関係も考えた場合に政府としても重視せざるをえない問題という認識がある。
  そんな中、3月23日には、厚生労働省において「EPA介護福祉士候補者に配慮した国家試験のあり方に関する検討会」が開催されている。検討課題としてあげられたのは、看護師国家試験においても検討された「母国語・英語での試験」と「コミュニケーション能力試験」の併用の適否などである(看護師試験の検討会でも、この案については様々な議論が出されている)。同検討会はこの後も数回開催される予定で、6〜7月をめどに取りまとめが行われる予定だ。
  いずれにしても、このEPAによる介護福祉士・看護師候補者の受け入れについては、当初から施策としての方向性に様々な議論が持ち上がっている。政府は今もなお「経済連携活動の観点から特例的に行っているもので、労働力不足対策ではない」ことを再三強調している。だが、わが国が直面している看護師、介護士の深刻な不足と照らした場合、どこまで両国民の理解が得られるだろうか。ちなみに、来年3月には、ベトナムとのEPAにおいても看護師・介護福祉士候補生の受け入れについて結論が出される予定だ。
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2012.04.19
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