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短時間労働者に対する厚生年金保険の適用が拡大へ
● 「94万円以上」改正法案を国会に提出
  野田内閣は3月30日に、第180国会に「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案」を提出。同改正法案には、「短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大」(平成28年4月から施行)が盛り込まれている。
  これは社会保障審議会特別部会での審議によって、「企業の従業員でありながら厚生年金保険の恩恵を受けられない短時間労働者への適用を拡大し、社会保険における『格差』を是正する。また、働かない方が有利となる仕組みを改め今後の人口減社会に備える」との考え方に基づいたもので、同改正法案が成立すると、短時間労働者に対する厚生年金保険の適用は下表のように拡大される(青色の部分)。
● 適用が拡大されると大手流通業などへの影響必至
  ここでは、週所定労働時間が20時間以上30時間未満で、給与が月10万円(年収120万円)の短時間労働者の場合、改正によってどのような影響が出るのかシミュレーションしてみよう。
(1)当面の家計への影響
「負担増」  第3号被保険者から第2号被保険者に変わる場合。
保険料負担が0円だったのが、厚生年金保険料の本人負担分約0.8万円/月となり、負担増は約8,000円/月となる。
負担増となるパート主婦(約20万人と推測)の中には、労働時間を週20時間未満とする、或いは年収を94万円未満とするなど、働き方を変える人が出てくることが予想される。
「負担減」  第1号被保険者から第2号被保険者に変わる場合。
国民年金保険料約1.5万円/月の負担が、厚生年金保険料の本人負担分約0.8万円/月となり、負担減は約7,000円/月となる。
(2)事業主への影響
「負担増」  上記いずれの場合も、現在の負担0円が厚生年金保険料の事業主負担分として、約0.8万円/月、年間約9.6万円の負担増となる。
パート労働者の多い企業には影響が大きいため、当面は従業員501名以上の大企業を対象とする。スーパーなどの流通業、食品製造業などパート労働者の比率の高い大企業では大きな影響が出る見込みだ。
(3)将来の家計への影響
「給付額の増額」  将来の給付は老齢厚生年金の支給分が増えることになる。
老齢基礎年金(満額の場合約6.6万円/月)に加えて、老齢厚生年金が約2.1万円/月加算される(約37年勤続の場合)。
本稿の内容は、2012年5月9日現在のもの(第180通常国会で審議中)。
本稿の試算は、社会保障審議会「短時間労働者への社会保険適用に関する特別部会」(平成24年3月19日開催)資料をもとに筆者が作成。
参考:「短時間労働者への社会保険適用等に関する特別部会(第13回)説明資料」
   (平成24年3月19日・厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025mv0-att/2r98520000025mya.pdf
  
古賀輝行(こが・てるゆき)
古賀社労士・FPオフィス 代表
〒169-0073
東京都新宿区百人町1-4-15 竹見ビル304号 新宿オフィス・サポート内
E-mail:kogasrfp26-22@ae.auone-net.jp
1951年2月22日生まれ(61歳)。損害保険会社に26年間、生命保険会社に12年間勤務後、2011年退職を機に個人事務所「古賀社労士・FPオフィス」を立ち上げる。
客先企業の顧問社会保険労務士としての業務のほかに、ファイナンシャル・プランナー(FP)として、ライフプラン、生命保険、社会保険の相談業務やセミナー講師を行っている。
  
  
2012.05.14
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