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海外の優秀な人材の雇用を促進する制度がスタート
■ 海外から優秀な人材を受け入れやすくなった
  法務省入国管理局では、この5月より「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」をスタートさせた。
  「高度人材」という名称からはどのような人材のことかイメージがわかないが、法務省の資料によると、「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材であり、我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国の労働市場の効率性を高めることが期待される人材」であるという。
  誤解を恐れずわかりやすく言うなら、学術研究活動、高度専門・技術活動、経営・管理活動の各分野において、我が国の経済成長や市場発展などに寄与してくれることが期待できる外国人の人材のことであるようだ。
  具体的には、外国人労働者のうち
  ●  基礎研究や最先端技術の研究を行う研究者
  ●  専門的な技術・知識等を活かして新たな市場の獲得や新たな製品・技術開発等を担う者
  ●  我が国の企業のグローバルな事業展開等のため、豊富な実務経験等を活かして企業の経営・管理に従事する者
が対象となる。
  高度人材と認定されると、学歴、職歴、年収などの項目ごとに設けられたポイントから、該当点数を集計し、その合計が所定の基準に達したら出入国管理上の優遇措置が与えられる。優遇措置の内容は、
  ・  複合的な在留活動の許容
  ・  在留期間「5年」の付与
  ・  在留歴に係る永住許可要件の緩和
  ・  入国・在留手続の優先処理
  ・  配偶者の就労
  ・  親の帯同
  ・  高度人材に雇用される家事使用人の帯同
  で、これまでの外国人労働者に課せられていた出入国管理上の制約に比べ、大幅に緩和されたものになる。
■ 我が国の国際競争力アップが課題
  同制度発足のねらいは、高度人材を我が国に受入れやすくし、国際競争力をアップするところにある。世界ではグローバル化が加速し、先進国では外国人労働者が急増している。
  しかし、「OECD統計によれば我が国における外国人労働者の割合は、OECD加盟国の中でも低い水準にある」という(経済産業省『通商白書 2008年版』より)。また、同白書によると、「グローバル化、知識経済化が進展し、ヒトの移動、特に高い技術や知識を有するヒトの移動が世界的規模で活発化している状況下において、今、多くの国において、国内のみならず、経営・研究・技術といった分野を中心に世界中から優秀な人材を集めることが、各国が持続的な経済成長を遂げるために重要であると考えられはじめている。このため、近年、主要先進国や一部のアジア諸国は、企業経営者、研究者・技術者等の一部の専門的・技術的労働者については、例外を設けて入国審査を緩和する等、積極的な受入れ政策を展開している」と海外での先進例を挙げる一方で、国内労働市場については「生産年齢人口の減少に加え、大学生の理系離れが指摘されており、我が国の今後の技術者不足には深刻な懸念が生じており、科学・技術分野の高度な外国人労働者の活用は、我が国にとって重要な課題となっている」と警鐘を鳴らしている。
  このような背景から、「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度」が発足したわけだが、同制度を活用することで、海外の研究者や技術者、専門家など優秀な人材を日本の企業に招聘しやすくなり、国際競争力のアップが期待される。
  なお、ポイント制優遇制度の開始に伴い、外国人雇用状況届出における在留資格の記載方法が変更されたので、同制度の活用を検討される事業主は厚生労働省の資料を参照されたい。
参照:法務省「高度人材に対するポイント制による優遇制度の導入について」
http://www.immi-moj.go.jp/info/120416_01.html
参照:厚生労働省「ポイント制度施行に伴う外国人雇用状況の届出について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin-koyou/dl/g120424.pdf
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2012.05.21
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