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深刻な公認会計士試験合格者の未就職問題
● 公認会計士の3人に1人が税理士登録
  日本税理士会連合会機関紙「税理士界」5月15日号によると、平成23年度の登録事績で、公認会計士の資格で税理士登録した人は7,706人だった。3月31日現在の公認会計士の登録者は、2万3,121人(外国公認会計士4人を含む)であり、税理士登録者は33.3%に当たる。実に公認会計士の3人に1人が税理士登録をしているということになる。実務経験を修了していない、会計士補、試験合格者、これらは予備軍といってよいであろうが、9,000人を超えている。
  公認会計士会員数等調(平成24年4月27日現在)によると、会員は、公認会計士2万3,117人、外国公認会計士4人、監査法人213件の2万3,334。準会員は、一号準会員(公認会計士及び外国公認会計士となる資格を有する者)27人、二号(会計士補)998人、三号(会計士補となる資格を有する者)2人、四号(公認会計士試験に合格した者(一号準会員該当者を除く))7,635人、五号(特定社員(地域会には所属しない))173人の計8,835人いる。
● 平成23年度試験合格者の40%が未就職者
  一方、現在公認会計士試験合格者で未就職者が1,100人にのぼる。うち昨年2011年度の試験合格者で求職活動中の者は、合格者の約40%の539人もいる。また、年齢別の求職活動者は、40歳以上47人、35歳以上40歳未満96人、30歳以上35歳未満236人、25歳以上30歳未満408人、20歳以上25歳未満313人。30歳未満の者が全体の65%以上の721人にものぼり、年齢が若くても就職できていない実態が浮き彫りとなっている。
  この背景には、平成18年度から公認会計士試験を新しい試験制度に移行した折に、公認会計士の規模を平成30年ごろまでに5万人にすることが提唱されたことがある。
  複雑化・多様化・国際化しているわが国の経済環境の下、公認会計士は量的に拡大するとともに、質的向上も求められている監査業務の担い手として、また、監査証明業務以外の担い手として、さらには企業などにおける専門的業務の担い手として、重要な役割を担うことが求められていると認識されていたのだ。
  その結果、年間2,000人から3,000人の公認会計士試験合格者が見込まれ、平成19年度では2,695人、20年度では3,024人の新試験による大量合格者が生まれたわけだ。しかし、これらの大量合格者に対する需要は当時の予測をはるかに下回り、一般企業の求人も進まず、試験合格者に対する実務経験の場は十分に提供されなかった。これが、まさに未就職者問題の元凶であるとみられている。
● 平成23年度税理士新規登録者の2割弱が公認会計士
  仕事がない、あるいは就職先のない公認会計士試験合格者は、結局、税理士業務に「活路」を見出さざるを得ない。再び税理士の登録事績をみると、公認会計士の資格で登録した者の増加傾向が続いている。過去の公認会計士の資格での新規登録者数をみると、平成19年度が233人で全体の8.69%と1割に満たなかったものが、平成22年度では405人で全体の16.9%となり、平成23年度では498人で全体の18.34%と2割近くを占めるまでになっている。
  日本税理士会連合会(池田隼啓会長)は、税理士法改正により公認会計士の税理士資格付与に対し、税法科目合格のハードルを設けることを主張している。日本公認会計士協会(山崎彰三会長)でも、上場会社向け採用依頼説明会の開催、業務補助支援制度の拡充などを展開しているが、根本的解決にはなお遠いようだ。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.06.04
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