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保険契約失効の取り扱いに関する最高裁判決、差し戻しに
◆ 「保険料未払いによる契約失効」は消費者契約法により無効?
  平成24年3月16日に保険契約の失効の取り扱いに関する最高裁判所の判決があった。
  この裁判は、保険契約者が、保険料の未払いにより失効した契約について、生命保険契約が存在していること(契約が失効していないこと)の確認を求めていたものである。
  一般に、保険料の払込みがないまま保険料払込猶予期間が過ぎた場合、保険会社からの催告の手続きがなくとも保険契約は失効する旨が約款に定められている。この規定が、消費者契約法に照らして無効であり、保険契約は失効していないというのが原告(契約者)の主張である。
  厳密な法律論は省略するが、「保険料の払込猶予期間を過ぎても保険料の払込みがない場合は、契約は効力を失う」という、生命保険に関わる人にとっては今まで常識とも考えられていた規定について争われた裁判であり、業界関係者の関心も高かった。1審では原告敗訴、2審の東京高等裁判所では原告勝訴の判決が言い渡されている。原審の東京高等裁判所ではこの規定が、消費者の権利を不当に制限するものであり、消費者契約法により無効であるとの判決であった。しかし、最高裁判所は保険会社の上告により、原判決を破棄、東京高裁に差し戻しという判決とした。
  判決理由として、
   ・  保険料が払込期限内に払い込まれず、かつ、その後1か月の猶予期間の間にも保険料の支払いがない場合に、初めて保険契約が失効する旨を明確に定めるものであり
   ・  約款に、払い込むべき保険料等の額が解約返戻金の額を超えないときは、自動的に保険会社が保険契約者に保険料相当額を貸し付けて保険契約を有効に存続させる旨の条項(保険料の(自動)振替貸付制度)があり
   ・  保険会社が、保険契約の締結当時、上記債務の不履行があった場合に契約失効前に保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用を確実にしているとき
には、保険会社の「無催告失効」の約款の規定は消費者契約法に反するものではないとしている。
  ただし、「保険契約者に対して保険料払込みの督促を行う実務上の運用」に関して、具体的な内容までは判示されていない。
  次は東京高等裁判所で、保険料が未払いとなった後の保険会社の実務について事実認定を行ったうえで判決が言い渡されることになる。引き続き注目していきたい。
2012.06.11
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