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平成23年分確定申告、所得税納税額が4年ぶりの増加
● 年少扶養控除の廃止で税額は2.9%増
  国税庁がこのほど発表した「平成23年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、所得税の確定申告書を提出した人は、前年を5.6%下回る2,185万3,000人となり、3年連続の減少となった。これは、景気の低迷により申告納税額がある人(納税人員)が同13.5%減の607万1,000人と6年連続で減少したことなどが要因とみられている。納税人員の減少に伴い、その所得金額は同2.9%下回る33兆6,790億円と、5年連続で減少した。
  しかし申告納税額は、前年を2.9%上回る2兆3,093億円となり、4年ぶりの増加となった。これは、2010年度税制改正で、15歳以下の親族を扶養する納税者を対象とした年少扶養控除の廃止などの影響も考えられる。申告納税額は、ピークの平成2年分(6兆6,023億円)の約3分の1に当たる。
  なお、還付申告者数は、6年ぶりに減少した前年から0.9%微増の1,279万2,000人となったが、申告者全体の約59%を占めている。
● 相続税の暦年課税での納税額は10.8%増の1,228億円
  所得税申告者のうち、株式等の譲渡所得の申告者は前年に比べ3.8%減の99万9,000人、うち所得金額がある人は同20.2%減の21万人と減少したが、所得金額は同8.4%増の1兆1,108億円と増加した。これらの株式等の譲渡所得の申告者を除く土地等の譲渡申告者は同1.5%減の40万3,000人となったが、うち所得金額がある人は同7.1%増の24万人、所得金額は同12.3%増の2兆7,902億円と、いずれも前年を上回っている。
  一方、贈与税の申告状況をみると、暦年課税を適用した申告者は前年に比べ9.7%増の37万9,000人、うち納税額がある人は同12.9%増の27万1,000人、その納税額は同10.8%増の1,228億円と伸びた。1人当たりの納税額は同1.9%減の45万円。相続時精算課税制度に係る申告者は同1.9%減の4万9,000人、うち納税額があった人は同4.0%減の3,000人、申告納税額は同3.1%減の191億円。1人当たりの納税額は同1.0%増の600万円だった。
● 大震災での雑損控除適用者は19万9,000人
  また、2009年分から導入された住宅取得等資金の非課税を適用した申告者は前年に比べ3.0%増の7万3,000人と増えたが、住宅取得等資金の金額は同13.9%減の6,683億円、うち非課税の適用を受けた金額は同17.5%減の5,937億円と、いずれも減少した。これは、父母や祖父母など直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税枠が、平成22年中の1,500万円から平成23年中は1,000万円へと減少したことが要因とみられる。
  なお、東日本大震災により家屋損壊などの被害を受けた人を対象に税負担を軽減する雑損控除等の適用を受けた人は前年を39.2%上回る19万9,000人で、前年分を合わせた累計は34万2,000人にのぼる。また、寄附金控除(所得控除)1,219億円と政党等寄附金等特別控除(税額控除)250億円の合計は1,364億円(重複適用のため一致しない)で、うち震災関連寄附金がほぼ6割を占める819億円だった。
  参考資料:国税庁「平成23年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
  http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2011/kakutei_jokyo/index.htm
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.06.18
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