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ドルコスト平均法を利用した金融商品の比較
● 2008年以降の4つの金融商品の推移を比べる
  欧州不安がおさまらない。ギリシャでは今月18日から緊縮財政派の連立協議が始まりひと安心となったが、欧州市場ではスペインの金融不安が再燃している。スペインは金利の低下を背景に住宅価格が高騰し、2002年から2008年までの6年間で2.3倍になり、そこでバブルがはじけた。日本の1990年代を思い出させる経済環境である。
  2008年といえば、リーマンショックが起こり、そこから世界経済が大きく変化した年である。日本はそれ以降、金融危機、東日本大震災、欧州危機と大きな波をかいくぐってきた。そこで、金融危機以後どのような金融商品に投資していればよかったのか、日経平均株価、為替(対ドル)、金、NYダウ(円換算)に絞り、ドルコスト平均法を利用し検証してみたい。
  ※ ドルコスト平均法:金融商品を一度にまとめて購入するのではなく、例えば毎月一定額というように、定期的に定額を買付ける投資方法のこと。
  ※ ドルコスト平均法による検証:2008年10月から2012年5月まで日経平均株価、為替、金、NYダウに毎月1万円ずつ計44万円購入する方法で投資したと仮定(手数料、税金は考慮せず)。
@日経平均株価
  2008年10月の終値は8,576.98円であった。2009年2月に7,568.42円の安値をつけた後、2010年3月には11,089.94円の高値をつけた。6月18日の終値は8,721.02円と推移している。
  ドルコスト平均法による購入口数は46.74口となり、平均購入価格は9,413.77円である。6月18日の終値8,721.02円で換算すると407,620円となり、投資結果は▲32,380円であった。
A為替(対ドル)
  2008年10月のレートは、1USD=98.41円の円安でスタートし、その後2012年1月には76.19円の高値をつけ、6月18日の終値は79.08円と推移している。
  ドルコスト平均法による購入口数は5,120.03口、平均購入価格は85.93円である。6月18日の終値79.09円で換算すると404,943円となり、投資結果は▲35,057円であった。
B金(田中貴金属データを基に検証)
  2008年10月の終値は2,665円であった。同年11月に2,398円の安値をつけ、2011年9月には4,434円の高値をつけ、6月18日の終値は4,387円で推移している。
  ドルコスト平均法による購入口数は128.73口となり、平均購入価格は3,418円である。6月18日の終値4,387円で換算すると564,738円で、124,738円のプラスとなった。
CNYダウ
  2008年10月の終値は9,325.01ドルであった。その後2009年2月に7,062.93ドルの安値をつけ、2012年6月18日の終値12,741.82ドルが一番の高値と推移している。
  ドルコスト平均法による購入口数は0.4859口となり、平均購入価格は905,536円である。6月18日の終値12,741.82ドルで換算すると489,665円で、49,665円のプラスとなった。
  12741.82ドル×79.09円×0.4859=489,665円
※グラフをクリックすると別画面で大きく表示されます。
  上記の比較推移表から推察できることは、日経平均株価はほとんど横ばいに推移し、為替は20%程度下落、金価格は50%以上上昇、NYダウは6%程度上昇した。
  毎月4万円を4商品にドルコスト平均法を利用し、分散投資したと仮定すると、44万円×4=176万円投資し、1,866,966円となり、その結果106,966円のプラスとなった。
  最近は分散投資や長期投資は効果がないと新聞や雑誌に書かれているが、このように動きが異なる金融商品に投資すると分散投資は多少なりとも効果が得られることがわかった。
  また、長期投資を、一度に購入し長期間保有すると考えている投資家が多いようだが、長期投資というのは今回のように長い期間、時間をかけて定期的に投資し、長期で保有することが本来の長期投資といえる。
  大きく変化してきている世界経済、投資スタイルも大きく見直す必要があるのではないだろうか。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2012.06.28
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