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不服申立て・訴訟の納税者救済・勝訴割合は10.6%
● 異議申立てでの救済割合は8.3%に減少
  納税者が国税当局の処分に不満がある場合は、税務署等に対する異議申立てや国税不服審判所に対する審査請求という行政上の救済制度と、さらには訴訟を起こして裁判所に処分の是正を求める司法上の制度がある。
  国税庁・国税不服審判所がこのほど公表した「平成23年度における不服申立て及び訴訟の概要」によると、今年3月までの1年間(平成23年度)の不服申立て・税務訴訟を通しての納税者救済・勝訴割合は10.6%となったことが分かった。
  異議申立ての発生件数は、申告所得税983件(24.1%減(前年度比、以下同様))、法人税等562件(13.7%減)、徴収関係408件(49.0%減)など軒並み減少し、全体では前年度から25.5%減の3,803件となった。処理件数は、「取下げ等」641件、「却下」413件、「棄却」3,082件、「一部認容」331件、「全部認容」44件の合計4,511件。
  納税者の主張が一部でも認められたのは375件となり、処理件数全体に占める割合(救済割合)は前年度を1.7ポイント下回る8.3%だった。
● 訴訟での納税者勝訴割合は最近10年間で3番目に高い13.4%
  また、税務署の処分を不服とする国税不服審判所への審査請求の発生件数は、申告所得税806件(14.3%増)、相続・贈与税307件(34.1%増)など、徴収関係303件(34.0%減)以外は増加し、全体では前年度から16.1%増の3,580件。処理件数は、「取下げ等」284件、「却下」285件、「棄却」1,994件、「一部認容」285件、「全部認容」119件の合計2,967件だった。
  納税者の主張が何らかの形で認められた救済割合は同0.7ポイント増の13.6%となった。
  一方、訴訟となった発生件数は、所得税144件(13.4%増)、法人税84件(5.0%増)、相続・贈与税52件(20.9%増)など、ほとんどの税目で増加したことから前年度を11.7%上回る391件だった。終結件数は、「取下げ等」27件、「却下」15件、「棄却」287件、「国の一部敗訴」20件、「同全部敗訴」31件の合計380件。国側の敗訴(納税者勝訴)割合は同5.6ポイント増の13.4%となり、最近10年間では3番目に高い割合となった。
● 納税者救済・勝訴、全体では7,858件中830件
  このような納税者救済・勝訴割合は、あくまでも結果論だが、全体でみると、平成23年度中に異議申立て・審査請求・訴訟を通して納税者の主張が一部でも認められたのは、処理・訴訟の終結件数の合計7,858件(前年度8,817件)のうち830件(同982件)で、その割合は10.6%(同11.1%)と、前年度に比べ0.5ポイント減少している。
  これは、異議申立てにおける救済割合の減少が要因とみられる。
  資料:国税庁「平成23年度における不服申立て及び訴訟の概要」
  http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2011/fufuku_h23/index.htm
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.07.02
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