>  今週のトピックス >  No.2464
第3号被保険者は巨大勢力
● パート労働者を厚生年金に取り込む法案が審議されている
  「社会保障と税の一体改革」が注目を集めているが、そのなかでパート労働者の厚生年金適用範囲を広げようとする法案が審議されている。
  社会保障制度の拡充の観点からすると結構なことのように思われるが、適用範囲が広がることにより、今まで負担していなかった保険料を負担しなければならない層が当然のごとく発生するようになる。
● 第3号を扶養する第2号被保険者を併せると2千万人に
  第3号被保険者は、実に1,009万人も存在している。これは東京都の人口には及ばないものの、20歳〜59歳の公的年金加入者総数6,457万人の約16%に相当し、第1号被保険者数1,907万人の半分以上の規模になる大きな集団だ。
  そして、当然のことながら、この第3号被保険者を扶養する第2号被保険者(会社員や公務員)が存在している。ということは、第3号被保険者にかかわりのある公的年金の加入者は2,000万人を超え(=1,009万人の倍)、第1号被保険者数を上回る巨大な勢力ということになる。
  したがって、厚生年金の適用範囲を広げようとする動きは、第3号被保険者本人だけの問題ではなく、それを扶養する第2号被保険者を巻き込んだ大きな問題と考えなければならない。
【公的年金加入状況(20歳〜59歳)】 (単位:千人)
加入者総数 第1号被保険者 第2号被保険者 第3号被保険者
64,570 19,066 35,414 10,091
厚生労働省:平成22年公的年金加入状況等調査
● 第3号被保険者制度そのものの見直しも検討されている
  厚生年金の保険料は、第2号被保険者本人の報酬(標準報酬月額や標準賞与額)によってのみ決められ、扶養する第3号被保険者がいようがいまいが変わらない。
  つまり、妻が第3号被保険者でなくなった場合でも、夫の厚生年金保険料は変わらないのであるから、妻が自分の保険料を負担することになれば、一家の公的年金に対する保険料負担は確実に増えることになる。
  第3号被保険者制度に関しては、「女性の年金権を確立させた」とか、「子育てなどで働ける環境にない女性を保障するセーフティネットとなっている」などの肯定的な意見がある一方で、「共働きの妻や独身女性に不公平感が生じている」とか、「女性の就労促進に悪影響を与えている」という批判も多い。
  現時点では、第3号被保険者を厚生年金に取り込む動きは、さまざまな条件が付され、25万人程度に影響が及ぶかどうかの議論だが、第3号被保険者制度自体の見直しの議論は今に始まったことではない。
  今のところ、専業主婦というよりも、扶養の範囲で働く女性がターゲットとされているが、社会保障と税の一体改革においては「第3号被保険者制度の見直しについて総合的に検討を行う」と明記されている。
  今後、総合的に検討するという内容の具体的な部分が見えてくれば、2,000万人の巨大勢力が政権の敵となるか味方となるかの動きが出てくるだろう。そうなると、年金制度だけではなく、政局の行方を左右する大きな問題となってくるかもしれない。消費税引き上げ問題も大きな関心事ではあるが、第3号被保険者の件も決して小さな事ではないはずだ。
参照:厚生労働省オームページ「平成22年公的年金加入状況等調査の概要について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000028xqe-att/2r98520000028xrv.pdf
2012.07.23
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