>  今週のトピックス >  No.2467
国民年金加入者の約4人に1人は「収入なし」
● 国民年金の第1号被保険者の4割近くが「年収50万円以下」
  厚生労働省では、このほど、「公的年金加入者等の所得に関する実態調査」の結果を取りまとめ、公表した。このような年金加入者の年収調査は初めて行われたもので、今後の継続的な調査により、その傾向を分析していくことは重要である。
  調査結果によると国民年金に加入する第1号被保険者の38.0%は「年収50万円以下」で、約4人に1人(24.6%)は「収入なし」であるという事実があきらかになった。
  国民年金の第1号被保険者は、自営業の方などが加入する制度となっているが、現状では無職の人や非正規雇用労働者のウェイトが全体の6割を占めており、それらが結果として反映された形となっている。低所得者層がこれだけの割合を占めている事態は、大きな問題ともいえる。
  この調査は、今後の公的年金制度について議論を行うにあたって、自営業者、被用者、非就業者を通じた横断的な所得に関する実態を総合的に把握するための基礎資料を得ることを目的としているものであるが、今後これらをもっと他の事にも有効に活用できるのではないだろうか。
● 第2号被保険者等の1人当たりの平均年収は426 万円
  公的年金加入者における1人当たり平均年収は297万円となっており、これを加入種別にみると、第1号被保険者が159万円、第2号被保険者等が426万円、第3号被保険者が55万円となっている。また、男性の公的年金加入者における1人当たり平均年収は419万円、女性の公的年金加入者における1人当たり平均年収は166万円と大きな差があった。
  さらに、就業形態別に年収の分布をみると、第1号被保険者の場合、「自営業主」、「家族従業者」、「臨時・不定期」、「非就業者」は「50万円以下」が最も多い。「会社員・公務員」は「250万円超300万円以下」が最も多いが、このうち「フルタイムの会社員・公務員」は「300万円超350万円以下」が最も多く、「フルタイムでない会社員・公務員」は「50万円超100万円以下」が最も多かった。
  老齢年金受給者数の年収階級別分布をみると、「50万円超100万円以下」が25.1%、「50万円以下」が16.5%となっており、実に100万円以下の人は全体の41.6%にも上っている。
  一方で1人当たり平均年収は189万円となっており、老齢年金受給者の間では、大きな所得格差があることが理解できる。それは就労しているか否かによっても大きく違っており、1人当たり平均年収でみると、「非就業者」が150万円、「会社員・公務員」が479万円、「自営業主」が229万円となっていた。
  このようなデータが国民に周知されることで、長生きのリスクに対する備えの重要性、公的年金制度に依存することなく現役時代から老後に備えた自助努力をどのようにすべきか考えるきっかけになるのではなかろうか。
参照:厚生労働省「公的年金加入者等の所得に関する実態調査 結果の概要について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002exks.html
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2012.07.30
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