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個人マネーの行き先は国債から社債へ
  7月31日の日本経済新聞によると、2007年7月に大量発行された5年物の個人向け国債が7月大量に償還され、個人投資家は個人向け社債や投資信託への購入を増やしているようだ。
1)大量償還と低金利
  2007年7月に発行された個人向け国債(固定金利5年)は発行額1兆5,964億円、金利1.5%であった。一方、今年7月発行分の5年物の金利は0.19%にとどまっている。その金利差は1.3%以上。以前のような利回りが得られないため、投資魅力はかなり低下している。
2)個人向け社債の大量発行
  個人向け社債の今年1月から7月の発行額合計は8,951億円と前年同期に比べ、44%ほど増えた。大量に発行した企業としては三菱東京UFJ銀行の合計2,170億円、りそな銀行の合計660億円などがある。企業が個人投資家向けに社債発行を増やす背景には、欧州債務問題による市場混乱があり、企業も欧州から国内個人投資家にも資金調達先を多様化しているようだ。
  その金利水準は、三菱東京UFJ銀行(A+)3年物0.205%(発行額200億円)、りそな銀行(A)10年物1.24%と、個人投資家を想定したものになっている。格付けがBBBの企業の社債は、1年物SBIホールディングス債1.66%、マネックス債1.1%となっており、5年物個人向け国債より金利が高く魅力的である。
3)投資信託、不動産投資信託(REIT)
  投資信託では、配当利回りの高い国内外の株式に投資しているファンドが人気を呼んでいるようだ。というのは、株価が下落しても長期に保有すれば、一定の配当収入が期待できるからだ。
  また、不動産投資信託(REIT)では国内外のオフィスビルやショッピングセンターなどの商業ビルへ投資しているファンドが人気を集めており、4−6月期は差し引き1,630億円の流入となった。
  個人向け社債や投資信託を購入する際には、社債の利率や利回りの高さに目を奪われたり、社債だから安心と思うのは禁物で、発行体(社債を発行する企業)の信用度がどの程度なのか格付けなどを見ながら確認したい。
  また、投資信託は予想配当利回りの高さのみで投資するのではなく、購入時の手数料や保有コストなど(詳細は今週のトピックスNo. 2329参照)を確認しながら投資することが重要である。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2012.08.09
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