> 今週のトピックス > No.2482 |
![]() |
認知症高齢者250万人時代に向けた施策 | ||||||||
![]() |
![]() |
||||||||
![]() |
![]() ![]() ● 認知症が重くなっても、地域や自宅でケアする方向に
国の推計によれば、団塊世代が全員65歳以上になる2015年、認知症の状態像を示す日常生活自立度がU以上の高齢者が250万人に達するという。日常生活自立度Uとは「日常生活に支障を来たすような症状や行動、意思疎通の困難さが多少見られる」というレベルを指す。このレベルの認知症高齢者はその後もさらに伸び続け、団塊世代が全員75歳以上(いわゆる後期高齢者)になる2025年には、323万人にまで膨れ上がる。65歳以上の高齢者人口の9.3%、つまり、10人の高齢者がいれば、そのうちの1人は日常生活に支障を来たす認知症が認められることになる。
こうした状況を受け、厚生労働省では「認知症施策検討プロジェクトチーム」を編成し、今年6月18日に「今後の認知症施策の方向性について」と題した報告書をまとめた。基本的には、「認知症の人は精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方を改め、「認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」の実現を目指している。 ここで軸となっているのは、標準的な認知症ケアパス(状態に応じた適切なサービス提供の流れ)の構築である。これまでの認知症ケアの流れでは、「自宅→認知症グループホーム→施設あるいは一般・精神科病院」という具合に、状態が重くなるにつれて、住み慣れた地域から離れていく傾向が強かった。国が目指す新たな認知症ケアパスにおいては、むしろ逆の流れ(施設、病院から地域、自宅へ)を作りだすことを基本目標としている。 ![]() ● 認知症初期集中支援チームの構築がカギ
ただし、「言うは易し」で、この流れを実現していくためには、様々なハードルが存在する。例えば、高齢者のみの世帯(独居世帯や高齢者夫婦世帯)が増え続ける中、自宅をベースとしたときの日常的なサポートは誰が担うのか。医療・介護の在宅サービス資源だけでなく、一般住民への啓発・啓蒙を進める中でのサポーター(認知症サポーター。現在、全国で約330万人の養成が進む)も増えている。だが、こうした多様な資源をケアチーム体制にどうやって組み込んでいくかも課題となる。
こうした中で国が掲げているポイントの一つが、「認知症初期集中支援チーム」の構築である。これはイギリスの国家認知症戦略における初期集中支援サービスを参考にしたもので、地域包括支援センターが主導しつつ看護師や作業療法士などによって形成される。このチームが認知症早期から本人や家族にかかわる中で、認知症の状態像や家族のマンパワーなどを包括的にアセスメントし、適切なサービスへとどのようにつなげていくかという指針を作りだすという役割を担う。 認知症の場合、早期に適切な対応をとることが、その後の本人の症状を和らげるうえで大きなポイントになる。大切なのは、新たな集中支援チームを具体的にどのようなメンバーで構成するのか、実効性のあるアセスメントツールをどのように開発するのかという点だ。一般サポーターを含め、現場の多様な職能を巻き込んだ幅広い議論が求められている。 ![]()
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
2012.08.23 |
![]() |
|