>  今週のトピックス >  No.2484
消費増税法が8月10日に参院本会議で可決成立
● 所得税・相続税増税は25年度税制改正へ先送り
  消費増税を中心とする社会保障・税一体改革関連8法が8月10日、参院本会議で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。この結果、現行5%の消費税率は、平成26年4月に8%、27年10月に10%と2段階で引き上げられる。野田佳彦首相は、記者会見で、今回の一体改革の必要性について、「金利が低利で安定している現時点で安定財源を確保し財政健全化を図る必要がある」などと説明した。
  社会保障・税一体改革関連法案は、民主、自民、公明の3党が修正に合意したことを受けて6月26日に衆院で可決後、参院に送付されていたものだが、当初法案に盛られていた所得税・相続税増税、贈与税の見直しなどを規定した租税特別措置法については、平成25年度税制改正において議論する旨の規定が附則に設けられ、先送りされた。また、消費税の収入については、「年金、医療及び介護の社会保障給付及び少子化への対処施策経費に充てられる」と明記された。
● 低所得者対策の具体策は白紙状態
  消費税率引上げ時の低所得者対策では、番号制度の導入を前提に、総合合算制度、「給付付き税額控除」等の低所得者に配慮した再分配に関する総合的な施策の導入や、複数税率の導入を検討する。これらの施策の実現までの間の暫定的・臨時的な措置として、消費税率が8%となる時期から一律で定額の現金を配る「簡素な給付措置」を実施する。ただし、これらの低所得者対策の具体策は白紙状態にあり、今後の協議の行方が注目される。
  また、税率引上げの条件として平成23年度から32年度までの平均で「名目3%程度、実質2%程度」という経済成長率を目標とする景気条項が附則に明記されたが、この数値は、政策努力の目標を示すものであることや、税率の引上げの実施は、その時の政権が判断することなどが民自公3党で合意されている。税率引上げの可否判断時期は、首相が国会で平成26年4月の税率引上げの半年前と答弁しており、25年秋ごろになりそうだ。
● 課税適正化のための事業者免税点制度等の見直し
  消費増税法が成立したことに伴い、消費税制度の信頼性を確保するための一層の課税の適正化を進める。具体的には、(1)資本金1000万円未満の新設法人に係る事業者免税点制度、(2)簡易課税制度におけるみなし仕入れ率、(3)中間申告制度、の見直しを行う。
  事業者免税点制度は、新設法人を利用した租税回避行為を防止する観点と、中小事業者の事務負担への配慮という制度本来の趣旨とのバランスを考慮して、5億円超の課税売上高を有する事業者が直接または間接に支配する法人を設立した場合については、その設立した法人の設立当初2年間については、課税事業者とする見直しを行う。この改正は、平成26年4月1日以後に設立される法人について適用される。
  簡易課税制度のみなし仕入率(概算的な控除率)については、平成20年度分の申告事績を基にした実態調査を行った結果、金融業や不動産業、サービス業など一部業種において、みなし仕入率の水準が実際の仕入率を大幅に上回っている状況にあることが確認された。このため、今後、更なる実態調査を行い、その結果も踏まえた上で、みなし仕入率の水準について必要な見直しを行うこととされた。
  また、中間申告制度については、直前の課税期間の確定消費税額が48万円(地方消費税を含むと60万円)以下の事業者は、中間申告の必要はないが、これらの事業者のうち、自主的に中間申告を行う意志がある事業者について、平成26年4月以後に開始する課税期間から、任意に中間申告できる制度を導入する。なお、消費税の中間申告に係る確定消費税額の最低額については、現行の最低額と同一とすることを基本に調整する。
参考資料 :内閣官房ホームページ「社会保障・税一体改革に関連する国会提出法案等」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/houan.html
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.08.27
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