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消費税の簡易課税制度採用事業者の8割に“益税”
● 検査対象の約8割の事業者から約21億円の益税
  会計検査院が、消費税の簡易課税制度についての検査結果をまとめ国会及び内閣に提出した報告書によると、検査の対象とした法人・個人事業者約4,700事業者の約8割が簡易課税制度を利用したことにより、納付消費税額が低額となっており、平成19年度〜23年度で総額約21億円のいわゆる“益税”が生じていることが明らかになった。
  同検査院は、「現行制度のまま消費税率が引き上げられれば、益税は増大していく」との懸念を示している。
  簡易課税制度は、売上高に事業区分に応じたみなし仕入率を乗じて仕入高とみなすことにより、売上高だけから納付税額を計算する制度で、課税売上高が5,000万円以下の事業者に認められている。実際の仕入率を計算するのが困難な中小企業の事務負担に配慮して設けられた制度だが、仕入率を計算できるにもかかわらず、本則課税の場合と納税額の損得を比べ簡易課税制度の適用を判断している事業者が多いとの指摘がある。
● みなし仕入率50%の第5種は平均32.4%
  そこで会計検査院が、法人・個人計2,031事業者について、決算書等を基に課税仕入率の平均を試算したところ、事業区分ごとにみなし仕入率と課税仕入率の平均を比較すると、みなし仕入率が全ての事業区分において課税仕入率の平均を上回っていた。そのなかでも第5種(運輸・通信業、サービス業及び不動産業)の課税仕入率の平均は32.4%となっていて、第5種のみなし仕入率50%と大きくかけ離れた状況が明らかになった。
  また、過去に本則課税を適用したことがあり、その後簡易課税制度を適用している法人・個人事業者計2,656事業者の課税期間の消費税納付率を分析したところ、簡易課税制度を適用した課税期間の消費税納付率のほうが、本則課税を適用した課税期間より低くなっていた。一方で、設立2年以内の法人は売上高に関係なく簡易課税制度を利用できることなどから、5億円を超える売上高がありながら、制度を利用している法人が12社あった。
  以上の検査の対象となった3,075法人、1,624個人事業者、計4,699事業者が簡易課税制度を利用したことにより、全体の約8割の3,742事業者が納付消費税額が低額になっており、その低額となった “益税”は推計で総額21億7,647万円にのぼった。
  会計検査院は、「今後、財務省において、簡易課税制度のあり方について、引き続き、様々な視点から有効性や公平性を高めるよう不断の検討を行っていくことが肝要」と指摘している。
参考 :会計検査院 検査結果(平成24年分)「消費税の簡易課税制度について」
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/24/pdf/241004_youshi_1.pdf
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.10.22
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