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介護サービス情報公表システムが一新
● 見やすい画面、初心者も検索しやすいサイトに改良
  自分たちが暮らす地域には、どんな事業者によるどんな介護サービスがあるのか。それぞれの特徴を比較・検討するための手がかりはないか──。
  こうした情報を全国レベルで提供している公的システムが、「介護サービス情報公表システム」である。平成18年度の介護保険法改正によって誕生したシステムだが、平成24年10月1日よりリニューアルされた。
  同システムについては、厚生労働省が運営する介護事業所検索のインターネットサイトで利用することができる。リニューアルされたポイントは大きく3つに分けられる。
  第一に、テキスト化された情報が多いため、ページを開くだけで疲労感を感じるという点を改善。地図、ボタン、アイコン等を活用しつつ、画面をシンプルに整理し、高齢者でも見やすい配色を工夫した。特に、自分の在住する都道府県、市区町村を地図上でクリックし、検索された事業所の所在地がやはり地図上で表示される点が特徴である。この方式はリニューアルに向けたモデル事業で特に好評だったことで、今システムの目玉ともいえる。
  第二に、ネット初心者あるいは介護保険サービスについてよく知らないという人でも検索しやすいように、@一画面の情報量を最小限に絞り、Aサービス種別を「内容ごと」に分類したという点。例えば、訪問系サービスについては「自宅に訪問」、通所系サービスについては「施設に通う」という具合に、分かりやすい言葉に置き換えている。
  第三は、「事業所の特色ページ」を創設し、事業者がPRしたい情報を自ら投稿できるようにしたという点。テキスト情報だけでなく、画像や動画もアップすることができる。誇大広告にならないようにするという課題は残るが、利用者にとっては「難しい言葉を並べられるよりも、サービス内容をイメージしやすい」というメリットは享受できる。
● HPの認知が広がらなかった理由の1つ「使い勝手の悪さ」を解消
  そもそも、この介護サービス公表制度については、平成24年度の制度改正議論の場において、一般の利用者・家族の活用が進んでいない点が課題として上がっていた。厚労省の介護保険部会に提示されたアンケート調査結果によれば、事業者情報の公表の重要性について利用者・家族の8割弱が「重要」と答えている一方、公表ホームページ(HP)の存在について「知らない」という回答も約8割に及んでいる。また、「知っている」と答えた人でも、活用した割合は3割弱にとどまっている。
  活用自体が進まないのは、周知策に課題があるとも言えるが、一方で、HPの存在を知ったきっかけとして「ケアマネジャーが情報源」という回答が最も多い。ケアマネジャーのHP認知度は9割近くに及ぶ点を考えると、「使い勝手が悪いためにアドバイスとして有効性を欠く」という意識があることが想像できる。
  いずれにしても、今回のリニューアルをきっかけとして「自ら事業者情報を集める」という意識が高まれば、制度を進化させる大きな力ともなりえる。少しでも多くの人にHPの存在を知ってもらいたいものである。
参考 :厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護事業所検索」
http://www.kaigokensaku.jp/
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2012.10.25
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