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国交省、厚労省連携し建設業の社会保険未加入対策に本腰
■ タテ割り行政を越えて加入を指導
  建設業者の社会保険(厚生年金及び健康保険、雇用保険)の未加入事業所に対する加入促進の動きが強まっています。国土交通省では、各種取組みを通して「今後5年を目途に建設業許可業者の加入率100%を目指す」(国土交通省土地・建設産業局資料「建設業における社会保険未加入問題への行政の取り組み」平成24年10月31日改訂より)という意気込みです。取組みのうちとくに事業主に影響が大きいものを以下に2つ紹介します。
@ 建設業許可における確認(平成24年11月1日施行)
  通常、監督官庁はタテ割り行政ですが、厚生年金と健康保険については国土交通省と厚生労働省が連携を取っており、当局が本腰を入れていることが感じられます。
  建設業の許可・更新の際に、その許可行政庁である国土交通省および都道府県が社会保険加入状況を確認します。社会保険に未加入となっている建設業者に対しては加入指導を行い、それでも未加入のままの事業所は、厚生年金および健康保険については厚生労働省の監督下にある日本年金機構ブロック本部へ、雇用保険については都道府県へ、それぞれ公文書送付およびE-mail送信で原則毎月1回「通報」されます。
  通報を受けた日本年金機構年金事務所または都道府県は、数次の加入指導を行います。再三の加入指導等に従わず立ち入り検査も拒否する場合は、当該建設業者を通報した許可行政庁にその旨が通知されます。
  最終的には、指導に応じない事業所として、許可行政庁により監督処分が実施されることになります。
  なお、厚労省は日本年金機構が通知を受けた全事業所の加入状況を取りまとめ国交省に報告することになっています。
A 社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン作成(平成24年11月1日施行)
  本ガイドラインは、社会保険加入について、元請と下請がそれぞれ負うべき役割と責任を明らかにしています。
  元請企業には、「下請企業選定時の確認・指導」、「下請けの各作業員についての作業員名簿を活用した確認・指導」などが求められ、下請企業には、「雇用する労働者の社会保険加入手続を適切に行うこと」、「元請企業が行う指導に協力すること」が求められています。
  注目すべきは、以下のような厳しい指針が盛り込まれている点です。
  「遅くとも平成29年度以降においては、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の全部又は一部について、適用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、下請企業として選定しないとの取扱いとすべきである。」
  「遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである。」
  (いずれも国土交通省資料「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」より)
  今後の取り組みに注目していきたいところです。
参照:国土交通省ホームページ「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_fr2_000008.html
  
野上 幸彦 (のがみ・ゆきひこ)
野上社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士
オーディオメーカー、建設コンサルティング、フードサービス業界での人事・営業職の経験を経て、平成19年に野上社会保険労務士事務所を設立。多業種経験を活かした人事・労務コンサルティングを行っている。
nogami-sr0021@st-paul.gr.jp
  
  
2012.11.26
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