>  今週のトピックス >  No.2543
年金受給資格期間の短縮で生じる“誤解”
● 改正によって無年金者17万人が受給できるようになる!?
  年金機能強化法案が本年8月に可決されたことに伴い、平成27年10月より老齢年金の受給資格期間が10年になる。現状では、少なくとも原則25年以上加入していないと受け取れない条件が10年になるということである。大幅な短縮だけに注目を集めている。
  しかし、この改正が徐々に周知されてきたのと共に勘違いも増えてきた。今回はその誤解を解いていきたい。
  その前にデータから確認しておく。25年加入を満たせないために無年金となっている65歳以上の人の数は約42万人で、内訳は下記の通りである。
65歳以上の無年金者の納付済み期間の分布
納付済期間 10年未満 10年以上
15年未満
15年以上
20年未満
20年以上
25年未満
割合 59% 19% 15% 6%
社会保障審議会年金部会資料(平成24年2月6日)
  単純に計算すると、受給資格期間が10年以上になれば、無年金者42万人の40%にあたる約17万人が受給できることになる。それだけに影響も大きい。
  では、どのような誤解を招いているのであろうか?
● 10年納めればOKではなく、受け取れる権利が与えられただけ
  想像がつく方も多いと思うが『10年加入すればそれでいい?』との勘違いである。
  決して10年で年金加入を辞めていいことになったわけではないのである。年金を受け取れる権利が10年に短縮される改正なのだ。
  今まで通り、少なくとも20歳から60歳までは必ず加入しなければならないことには変わりない。つまり、大半の方にとって、金額が変わるわけではないので無関係の改正とも言える。
  仮に10年しか加入しなかった場合、受け取れる老齢基礎年金は「40年分の10年」となる。満額約80万円の1/4、すなわち年間で約20万円となってしまう。年金が受け取れたとしても、この額で老後生活を賄うのは困難であろう。
  正しい周知が行われないと、無年金者は減るが低年金者が増える結果となってしまいそうである。これは個人的にも非常に恐ろしいことだと感じている。
  老齢基礎年金の半分は税金で賄われている。未納・未加入期間がある人も税金は支払っているはずだ。加入期間が短いために年金が少なくなるということは、払ってきた税金分が受け取れないことと同じである。
  そうした観点からも、きちんと年金は加入し受け取れるものは受け取るべきであろう。
  また、この改正の実施時期は平成27年10月の予定である。既に変更されていると勘違いされている人も増えてきているので注意が必要である。
  残された3年間で一層の正しい知識の普及が求められるのは間違いない。
  
沖倉 功能 (おきくら・かつよし)
有限会社ピージェイハーベスト代表取締役
社会保険労務士・CFP®
年金を専門業務とし、セミナーや研修を通して多くの方に年金を伝えている。年間講師回数は約150回。単に制度の説明だけではなく、年金を知った上での対策の考え方なども客観的に解説している。
年金知識を身に付けたい方のための『実務で使える!年金基礎講座』や、年金講師に取り組みたい方のための『年金講師養成講座』も自主開催している。
ホームページ: http://www.pjh.co.jp/
  
  
2012.12.10
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