>  今週のトピックス >  No.2548
着々と進む消費税増税に向けたインフラの整備
● 消費税の還付申告の際に添付する明細書の提出が義務化
  国税庁では、消費税の大増税時代を睨んだインフラ整備を着々と進めている。なかでも注目したいのは、今年4月から動き出している「申告書及び届出書に係る各種添付(提出)書類の整備」。消費税に関する申告書や各種届出書類を提出する際に添付する書類の枠を広げるという内容で、これまで任意だった書類提出の義務付けも含まれている。
  例えば、「消費税の還付申告に関する明細書」の添付義務化だ。
  最近まで提出義務はなかったが、近年急速に増加している不正還付への対応が求められていたこともあり、今年(平成24年)4月以降の還付申告書の提出から「消費税の還付申告に関する明細書」に、控除対象となる取引金額の明細や、還付申告となった主な理由、主な課税仕入れの明細(資産の種類、取得日、取引金額、取引先名、取引先住所)などを記載して提出することが義務付けられた。
● 「消費税受還付罪の未遂犯」の処罰規定
  また、消費税にからむ風変わりな処罰規定も創設されている。「消費税受還付罪の未遂犯」の処罰規定だ。
  消費税の不正といえばまず浮かぶのが仕入税額控除を悪用した不正還付である。実際に不正還付を受けた者には「消費税受還付罪」の規定(消費税法64条1項2号)が設けられているが、不正な還付申告をしたものの税務署のチェックにより未遂に終ったケースでは、「還付金の受領」が伴っていないため「受還付犯」が成立しなかった。
  そこで国税庁は、「受還付未遂罪」を設けて不正受還付の未遂についても処罰できるよう、罰則規定を税制改正にねじ込んだ。「未遂」に刑事罰を与えるという点には唐突感もあるが、国税庁の2年越しの要望が汲み上げられ、昨年9月から導入されている。
  いずれの改正も、税率引上げによって消費税負担が増えれば、さらに深刻化する問題への対応策となりうる内容ばかり。増税論議中から国税庁は、消費税の大増税時代を睨んだインフラ整備を着々と進めてきた。
  消費税増税が決まった今、そのような動きはさらに活発化するものと思われる。今後の国税庁の動きから目が離せないところだ。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2012.12.17
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