> 今週のトピックス > No.2551 |
厚労省、高額療養費制度の見直しを提案 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
筆者が傍聴した、11月16日(金)開催の第58回社会保障審議会医療保険部会において、厚生労働省から健康保険の高額療養費制度についての見直しが提案された。決定には至っていないものの、今後の動向に注目したい。
● 高額療養費制度の現状
長期入院や手術により医療費が高額となるのにともない、健康保険の自己負担額も高額となることがある。そこで、高額療養費制度により、同一の医療機関等で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を高額療養費として支給している。年齢や所得に応じて、本人が支払う暦月の負担額の上限が定められており、また所定の要件を満たせば、さらに負担を軽減する仕組みも設けられている。
窓口負担30万円との差額である、212,570円が高額療養費として支給されるので、最終的な自己負担額は87,430円となる。多数回該当の場合は、44,400円である。 ● 高額療養費制度の問題点と提案された改善策
高額療養費制度の自己負担限度額が暦月単位であるため、年間の医療費が同じであっても、自己負担額に差が出てくることがある。
<医療保険部会に提出された例>
1月〜12月の1年間の医療費が約280万円で、一般所得者層に該当する者の場合
提案された改善策は、暦月単位の上限額に加えさらに、「年間上限額(64万円)を設ける」というもの。これによりケース@とケースAの自己負担額の差がなくなり、ともに年64万円となる。この年間上限額は、年齢区分、所得区分により異なる額とする。ケース@ 高額療養費適用前の1〜3月の自己負担が月約10万円(医療費約33万円) 4〜12月の自己負担が月約6万円(医療費20万円) 高額療養費の適用があるため、年間の合計自己負担額は約64万円となる。 (80,100円×3か月+44,400円×9か月+当初3か月の医療費×1%) ケースA 1〜12月の自己負担が月約7万円(医療費約23万円) 高額療養費の適用がないため、年間の合計自己負担額は約84万円となる。 (約7万円×12か月) ↓
同じ年間医療費であるにもかかわらず、年間の自己負担額に約20万円の差があり、アンバランスが生じてしまう。高額療養費を見直した場合の対象人数は、年間5万6,000人が見込まれている。多くの方に影響が及ぶ可能性のある提案であり、特に医療保険販売にもかかわることから今後の議論の行方に注意を払いたい。
|
2012.12.26 |
|