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改正犯罪収益移転防止法の施行で保険募集業務にも影響
● 本人確認以外に、取引時の確認事項が増える
  「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法)は、ひとことで言うと、組織犯罪等のマネー・ロンダリング対策を目的として制定された法律で、金融機関をはじめ、司法書士、行政書士など一定の士業者、宅地建物取扱事業者などに顧客の本人確認、疑わしい取引の届け出などを義務付けている。
  同法は、平成19年の一部施行にはじまり、23年4月には改正犯罪収益移転防止法(以下、改正法)が成立、25年4月から改正法が施行される。今回の改正では、保険募集に影響を及ぼす内容もあるため、関係の深い部分について解説する。
  改正法施行で日常業務にただちに影響を及ぼすものは、「取引時の確認事項の追加」であろう。現行は、お客さまから運転免許証などを提示いただくことにより本人確認を行っているが、改正法では、「取引時確認」として「本人特定事項」に加え、「取引を行う目的」「職業(自然人)または事業内容(法人や人格のない社団・財団)」「実質的支配者(法人)」を確認しなければならない。
  「本人特定事項」とは、個人の場合は氏名・住居・生年月日、法人の場合は名称・本店または主たる事務所の所在地であり、これは今までの本人確認と変わらない。確認方法も運転免許証や登記事項証明書(登記簿謄本・抄本)などの公的証明書を提示いただくことにより確認を行う。
● ハイリスク取引の場合は資産および収入の状況も確認
  また、改正法では、「ハイリスク取引」(マネー・ロンダリングに利用される恐れが特に高い取引)については、通常の取引時と同様の確認事項に加え、その取引が200万円を超える財産の移転を伴うものである場合には「資産および収入の状況」を確認することとなっている。この「ハイリスク取引」にはいくつかの類型があるが、保険募集に際して問題となるのは「なりすましの疑いがある取引または本人特定事項を偽っていた疑いのある顧客との取引」である。
  いずれにしても、取引時確認の方法については、保険会社等が定める方法に従うことになる。申込書・請求書等に取引時確認用の欄を設けそこに記入していく、あるいは取引時確認の専用帳票を起票し、確認を行うなどの方法を取ることになろう。
  特に、「ハイリスク取引」に該当するかどうかの判断や、該当する場合の「資産および収入の状況」の確認などは特に慎重を要するため、事務を取り扱う者は、所定の方法で本人確認用の帳票を起票し、各社の規定に沿った取り扱いが重要である。また、確認項目が増えることにより、個人情報保護の観点からも問題が発生しやすくなっているため注意が必要である。
参照 :警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官ホームページ「犯罪収益移転防止法の概要〜平成25年4月1日以降の特定事業者向け資料〜」(PDF)
http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/horei/filowcls20121127.pdf
2013.01.21
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