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競馬の的中馬券で得た払戻金は「一時所得」に該当
● 的中馬券に係る控除費用を巡る大阪地裁の裁判
  昨年、競馬の的中馬券によって得た払戻金を巡って話題となった裁判が大阪地裁であった。この事件は、男性会社員が、平成21年までの3年間、中央競馬のネット投票で得た払戻金を申告せず、約5億7,000万円を脱税したとして、所得税法違反に問われているものだ。
  男性は、5年間で得た払戻金総額から5年間に費やした馬券購入代金総額を差し引いて約1億5,500万円の差益を計上したが、国税当局は、的中馬券の購入のみに投じた額しか控除を認めず、男性が5年間に得た払戻金総額約36億6,300万円から、的中馬券の購入代金を差し引いた34億7,800万円を収入とみなしたわけである。
  この裁判は進行中で大阪地裁の判断が注目されるなか、別の事件で国税不服審判所はこのほど、競馬の的中馬券によって得た払戻金が雑所得、一時所得いずれの所得に該当するかの裁決を行った。
● 継続性・恒常性は認められない馬券の購入行為
  この事件は、地方公務員である審査請求人が競馬の払戻金を雑所得として申告したところ、原処分庁が一時所得に該当すると認定して更正処分等をしてきたため、その全部取消しを求めて審査請求された事案である。
  裁決は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」とは、その性質によって判断される所得源泉を有する所得以外の所得であり、所得源泉の有無は継続性・恒常性があるか否かが判断基準になると解釈。
  しかし、競馬所得の基礎となる馬券の購入行為は払戻金を得られるか否か分からない不確実な行為であり、競走ごとに独立した行為である結果、競馬所得の基礎となる馬券の購入行為に継続性・恒常性は認められず、馬券を継続的に購入したとしても、その所得が所得源泉を有する所得であると認めることもできないことから一時所得に該当すると判断、請求人の主張を斥けている。
● 競馬所得から控除できる金額は的中馬券に係る購入金
  また、一時所得の金額の計算の際に控除すべき金額は、個別対応的に収入を生じた行為または原因ごとに直接支出した金額に限られることから、競馬所得から控除できる金額は的中した馬券に係る購入金になると指摘。その上で、預金口座の入金額及び出金額はそれぞれ直前の払戻金等及び購入金の決済額であり、払戻金等に返還金が含まれていたとしても同額が購入金に含まれ、払戻金が券面金額を下回ることはないと認定した。
  結局、特払いも各年分に発生していないことから、原処分庁が採用した算定方法は、請求人にとって不利益な算定方法になるとはいえず、その算定方法を特段不合理とする理由も認められないことから、原処分庁が更正処分の際に用いた競馬所得に係る一時所得の金額の計算は、審判所においても妥当と判断している。なお、この国税不服審判所の裁決の年月日は2012年6月27日である。
参照 :国税不服審判所ホームページ「平成24年6月27日裁決 裁決書(抄)」
http://www.kfs.go.jp/service/JP/87/08/index.html
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.01.28
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