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定年後の継続雇用制度で「経過措置を利用する予定」は65%
● 改正高年齢者雇用安定法施行目前に、企業アンケートを公表
  労務行政研究所は、今年4月から施行される改正高年齢者雇用安定法(以下、改正高齢法)に対する企業の対応について緊急Webアンケートを実施し、その結果を1月18日に発表した。
  アンケート結果によると、改正高齢法への対応では、現在、「労使協定により継続雇用者の対象者を限定する基準」を「設けている」企業は86%に上っているが、平成25年4月からこの仕組みは廃止されるため、これらの企業は希望者全員を継続雇用制度の対象としなければならなくなる。
  ただし、25年3月末までに継続雇用制度の対象者の基準を労使協定で設けた場合は経過措置が認められ、厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢に到達した以降の者には、労使協定に基づいた対象者限定の基準を利用できる。
● 企業側は、継続雇用制度の対象者を引き続き限定したい意図
  改正高齢法では、平成28年3月末までは61歳未満の希望者全員が雇用対象となるが、61歳以上の者は労使協定の基準に適合する者に限定することができる。
  「継続雇用制度における経過措置を利用する予定」と回答した企業は65%で、今後も経過措置に則って、引き続き対象者を限定したい意図が垣間見られる。
  また、定年を迎えた高年齢者の継続雇用先を、自社だけでなく、グループ内の他の企業(子会社や関連会社)まで広げることができることについては、「広げる予定」と回答した企業は18%にとどまり、企業規模で格差がみられる結果となった。
● 4割強の企業が、若年層の雇用を抑制することを懸念
  今後、企業において継続雇用の対象となる高年齢者が増加した場合、新卒を含む若手や中堅層の採用が抑制されるのではないかと懸念されている。そこで、そうした今後の採用動向を聞いたところ、採用を抑制するかとの問いに対して「そう思う」が18.2%、「ややそう思う」が25.5%で、両者を合わせると43.7%となり、4割強の企業が“若年層の雇用を抑制する”と捉えており、若年層をめぐる雇用情勢が一層厳しさを増すことを予想させる結果となった。
  今回の改正により各企業では、高齢者のより効果的な活用のあり方を、これまで以上に真剣に考えなければならない。継続雇用された高年齢者が、仕事をするうえで高いモチベーションを保ちながら若年層の指導育成に力を発揮してもらえるようにするためにはどうすればいいのか、高齢者の視点で掘り下げていく必要がある。
参照 :
財団法人労務行政研究所ホームページ「改正高年齢者雇用安定法への企業の対応アンケート」
http://www.rosei.or.jp/research/pdf/000058128.pdf
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.02.12
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