>  今週のトピックス >  No.2574
社会保障制度改革で揺れる「介護」
● スケジュールでは2年後に法改正の予定
  1月21日、政権交代後初となる社会保障審議会・介護保険部会が開かれた。そこで示されたのが、今後の介護保険制度改正のスケジュールである。これまでの制度改正サイクルとしては、法改正が6年ごと、報酬改定が3年ごととなっていた。直近では、2012年4月に法改正と報酬改定が同時に行われ、24時間対応の巡回訪問サービス等が創設されている。
  ところが、今回示されたスケジュールでは、2年後の2015年4月に再び法改正を行なうとある。前政権期の社会保障・税の一体改革で掲げられた改革スケジュールでは、2012年度以降、介護保険関連の法改正を随時行なうとしていた。この流れが政権交代後も引き継がれ、具体的な日程として固められたことになる。
  介護保険制度をはじめ、これから進められる社会保障制度改革は、2012年8月に公布された「社会保障制度改革推進法」が軸となっている。内容的には、これからの社会保障全般のあり方の「枠」を定めたものだ。
  同法の第7条には介護保険制度についての規定もあり、「介護サービスの範囲の適正化等による(中略)効率化および重点化を図るとともに、低所得者をはじめとする国民の保険料にかかる負担の増大を抑制し」とある。「効率化・重点化」という言葉は分かりにくいが、要するに「必要なサービスを絞り込み、それによって保険料負担を抑制する」という意味に他ならない。では、どのような方向に向けて絞り込みが行なわれるのだろうか。
  ここで同法の第4条に着目したい。そこには、「必要な法制上の措置については(中略)社会保障制度改革国民会議における審議の結果等を踏まえて講ずる」とある。この社会保障制度改革国民会議は官邸が主導するもので、前政権時からスタートし、先の介護保険部会と同じ日に第3回の議論が行なわれている。
● 一定以上所得者については自己負担増を示唆
  そこで示された過去2回の議論のまとめでは、医療と介護のあり方について、いくつかの注目点が見られる。例えば、「在宅医療と地域包括ケアについて、少ない人員で対応する新たなシステムを考えるべき」、「医療の課題と介護の課題を一体として議論すべき」とある。サービスの絞り込みの方向性として、医療との一体化が示唆されており、医療ニーズの高い重度者への介護保険特化が垣間見える。
  さらに、医療との一体化という点では、現在の介護保険の利用者1割負担について、「(一定以上所得者の負担が)医療では既に3割負担となっていることを踏まえ、介護でも一定以上所得者の自己負担の議論を進めるべき」とある。サービスの絞り込みだけでなく、利用者の自己負担増も示唆している。
  この国民会議は2013年8月21日を設置期限とし、その結論を踏まえて今年度中に国会への法案提出が見込まれている。仮に国民会議の結論を受ける形となるなら、制度の枠組みを議論する介護保険部会に時間的余裕はあまりない。介護サービスの中であっさりと公的保険から外されるものが生じたり、自己負担が増えるとすれば、今から「介護保険に頼らない民間サービス」なども検討する必要がありそうだ。
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.02.14
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