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4月から支給開始年齢引上げ!年金と働き方の関係を検証
  本年4月に60歳を迎える男性の会社員や公務員の人から、年金の支給開始年齢が61歳に引き上げられる。いよいよ60歳から年金が受け取れない時代へ突入することとなる。
  引上げ間近ということもあるので、今回は年金と働き方の関係について確認してみる。
● 厚生年金に加入するか否かで判断は異なる
  60歳以降も収入があると年金は減額される。「在職老齢年金」という制度である。
  しかし、いかなる収入でも減額の対象となるわけではない。厚生年金保険の被保険者として働いた場合が対象となる。つまり、パートタイムなど厚生年金保険に加入しない働き方であれば、年金は減額されない。また、自営業収入や不動産収入なども年金減額の対象外である。
  では、60歳以降は年金が減額されない働き方を選択するのが得策ということなのだろうか?
  一概に答えは出せない。
  厚生年金保険に加入して働き続ける場合、確かに収入に応じて年金は減額される。しかし、60歳以降に支払った分は会社を辞めた際、あるいは65歳時に再計算され厚生年金額に反映される。すなわち、将来、確実に年金額が増えるのである。
  一方、厚生年金保険に加入しない場合は再計算がないので、現状の金額を受け取り続けることとなる。さらに、自ら国民健康保険に加入し保険料を支払う必要がある。扶養している年下の配偶者(一般的に妻)がいる場合、配偶者が60歳になるまで国民年金保険料(14,980円/月)も負担しなければならない。手許から国民健康保険等を支払うのは予想以上に家計に打撃を与えるものである。
  対して厚生年金保険に加入し続ける場合は、今まで通り健康保険は給与天引となり、配偶者は第3号被保険者のままなので年金保険料負担は不要である。
  このようにトータルで考える必要があり、単純にどちらの働き方が有利かの答えは出せないのである。
● 働けるうちはフルタイムが望ましい!?
  私個人の意見としては、在職老齢年金の影響も重要であるが、働けるのであればフルタイム、すなわち厚生年金保険に加入する働き方が良いのではないかと考えている。もちろん、各々の価値観や置かれた状況・体力の問題などもあるため安易に押し付ける問題でない。しかしながら、年金の受取だけを考慮して検討しているのであれば、フルタイムを優先的に考えるべきだと思う。
  年金は減額されるが一定の給与収入が得られる。その上、条件を満たせば雇用保険から高年齢雇用継続給付も受けられるため生活は安定するはずである。将来の年金額が増える安心感も大きい。
  もっとも、今後60歳からは無年金となれば年金減額も関係なくなるので、働き方や給与設計も変化してくると思われる。
  例えば、今までは60歳以降の年金額が10万円/月とすると、給与(総報酬月額相当額)を18万円までに抑えないと年金は減額されていた。どうしてもこの額を基準に働き方などを決める傾向が強かった。
  これが関係なくなるのである。年金の損得勘定抜きで、自分の状況に合致した働き方を選択する時代の到来とも言えるであろう。
  
沖倉 功能 (おきくら・かつよし)
有限会社ピージェイハーベスト代表取締役
社会保険労務士・CFP®
年金を専門業務とし、セミナーや研修を通して多くの方に年金を伝えている。年間講師回数は約150回。単に制度の説明だけではなく、年金を知った上での対策の考え方なども客観的に解説している。
年金知識を身に付けたい方のための『実務で使える!年金基礎講座』や、年金講師に取り組みたい方のための『年金講師養成講座』も自主開催している。
ホームページ: http://www.pjh.co.jp/
  
  
2013.02.18
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