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企業が押さえておきたい退職勧奨に関する注意点
● リストラ部屋を厚生労働省が調査
  先日、大手企業において、いわゆる「リストラ部屋(追い出し部屋)」に社員を集めて退職を強要したり、執拗な退職勧奨が行われたりしているという報道があったことから、厚生労働省は実態の把握が必要と判断し、現場の調査を行った(平成25年1月29日付 厚生労働省の報道発表資料より)。
  今後も企業規模に関係なく、事業所閉鎖や部署廃止、能力不足やメンタル不調等の理由により従業員に対して退職勧奨する機会も増えてくることが予測される。今回は、そのような背景もふまえてすべての企業に関係してくる退職勧奨の実務に関して基本的な知識とともに、注意すべきポイントをまとめてみた。
● 退職勧奨の提案に従業員が応じるかどうかは自由
  退職勧奨とは、使用者が従業員に対し、退職してもらえないかと提案をすることである。その提案の申し込みを受け入れるかどうかは従業員の自由となっており、拒否することも可能である。従業員が退職勧奨に応じて退職を申し込み、使用者が従業員の退職を承諾した時点で退職の合意が成立することになる。もちろん従業員が退職勧奨を拒否することもあり、状況によっては解雇せざるを得ないこともあるが、その理由によっては解雇無効ということで訴えられることも少なくないのが現状である。
  解雇と違って、退職勧奨の場合、会社都合の離職になることは確かであるが、従業員と退職に関して合意して雇用契約を解除することになるのでトラブルになることは少ない。退職勧奨に応じてもらう話がまとまった際には、1日でも早く退職願を出してもらうことが大切である。
● 退職勧奨に関する実務上の注意点
  退職勧奨を行う企業側の担当者は、退職勧奨される側の気持ちをよく考えたうえで、誠意をもって丁寧に説明をしなければならない。また退職勧奨に応じてもらうには、会社側も一定の条件を提示することが必要となることも多い。一般的には一定期間の賃金の保障、退職金の割増及び再就職支援サービスの利用などが考えられる。また、このような条件提示は、会社側が退職勧奨せざるを得なくなった理由、対象者の年齢、勤続年数、家族構成などもふまえたうえで判断したいところである。また退職勧奨に関しては、条件面を含めて退職に関する合意書を作成することがトラブル回避のためには必須といえる。
  最後に、退職勧奨については判例でも、「社会通念上許される限度を超えた手段・方法による退職勧奨は、退職強要として違法」としている。たとえば労働者が退職を拒否しているにもかかわらず、多数回、長期にわたり数人で取り囲んで退職勧奨を続けたりすると損害賠償の対象となるので、実務担当者や現場の上司は特に注意しなければならない。
参照 :厚生労働省「退職強要の有無等に関する調査」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002tye7.html
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.02.25
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