>  今週のトピックス >  No.2583
事業主が負担する「児童手当拠出金」とは
  児童手当については、平成22年から3年の間に名称が児童手当→子ども手当→児童手当と目まぐるしく変更され、それにともない要件や給付額も改定が繰り返された。また、被用者分の費用負担について、事業主が子のいない従業員の分まで児童手当拠出金を負担していることから、事業主が社労士等に照会されるケースが多数見受けられる。このようなことから、児童手当に対する関心が高まっていると推測される。この機会に児童手当の変遷と事業主の負担金について整理してみよう(文中、支給額は月額にて表示)。
● 児童手当の変遷
  児童手当制度のおもな変遷は下表のとおりである。
時 期 名 称 概 要
昭和47年
〜平成21年度
児童手当 制度創設当初は、支給対象は第3子以降の5歳未満の児童で、支給額は3,000円であった。
その後、多くの改定が行われ、平成21年度の時点では、受給者(一般的には児童の父母)の所得制限は、厚生年金加入者である被用者の場合、夫婦・児童2人世帯で所得額646万円であった。
支給額は、3歳未満は10,000円、3歳〜12歳(小学校修了)は第1子・第2子は5,000円、第3子以降は10,000円で、中学生は支給対象ではなかった。
平成22年度
〜平成23年度
子ども手当 所得制限がなくなり、高額所得者にも支給された。支給額は、15歳(中学修了)まで一律13,000円。
平成24年度〜
(現行制度)
児童手当 平成21年度までの児童手当と比べて給付内容が拡充されたが、所得制限が復活した。厚生年金加入者である被用者の場合、夫婦・児童2人世帯では、所得額736万円〈年収960万円(税引き前)〉となる。
所得制限以上の場合は、中学校修了まで一律5,000円が支給される。
所得制限未満の場合は、3歳未満は一律15,000円、3歳以上小学校修学までの第1子、第2子は10,000円、第3子以降は15,000円、中学生(15歳到達後の最初の年度末まで)は一律10,000円が支給される。
※所得制限は、扶養親族数により異なる。
● 福利厚生費の事業主負担
  児童手当拠出金を含む事業主の負担する法定福利厚生費は、平成25年2月現在以下のようになっている(健康保険は協会けんぽの東京都の料率で、介護保険第2号被保険者に該当。雇用保険は「一般の事業」。労災保険は「その他の各種事業」とする)。
単位:%
事業主負担 被保険者負担 備考
厚生年金保険 8.383 8.383 16.766 労使折半
健康・介護保険 5.76 5.76 11.52 労使折半
雇用保険 0.85 0.5 1.35 所定の負担割合
労災保険 0.3 0 0.3 全額事業主負担
児童手当 0.15 0 0.15 全額事業主負担
合計 15.443 14.643 30.086
● 児童手当の事業主負担
  児童の育成にかかる費用を社会全体で負担するという考え方から、児童手当法第20条に事業主は拠出金を納付する義務を負う旨が規定されており、事業主は児童手当拠出金を負担しなければならない。子どもがいない従業員の分についても事業主は児童手当拠出金を全額負担し、被保険者負担はない。健康保険や厚生年金保険等の他の社会保険と比べると、実額は少額だが、事業主の法定福利費の総額が大きくなったことから、注目する事業主が散見される。
  児童手当拠出金率は全国一律で、厚生年金保険の標準報酬月額、標準賞与額に乗じて負担金額を求める。かつての児童手当及び子ども手当のころの事業主の拠出金率は、平成18年度までは1,000分の9(0.09%)だったが、平成19年度以降は1,000分の1.3(0.13%)となっていた。これが現行の児童手当においては、1,000分の1.5(0.15%)となり、金額にすればわずかだが負担率は重くなる一方である。標準報酬月額30万円の場合で、450円の負担となる。
● 費用負担と事業主拠出金の使途
  事業主が費用負担しているのは、3歳未満の児童で受給者が厚生年金保険に加入している被用者の場合で、割合は、事業主が7/15(=21/45)、国が16/45、地方が8/45を負担している。全体の半分近くを事業主が占めているが、かつての児童手当や子ども手当と比べて事業主の負担割合は僅かだが減少している。
  なお、事業主拠出金の一部は、放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ等)の財源にも使われている。
参照 :厚生労働省ホームページ「児童手当について」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jidouteate/index.html
  
古賀輝行(こが・てるゆき)
古賀社労士・FPオフィス 代表
〒169-0073
東京都新宿区百人町1-4-15 竹見ビル304号 新宿オフィス・サポート内
E-mail:kogasrfp26-22@ae.auone-net.jp
1951年2月22日生まれ(61歳)。損害保険会社に26年間、生命保険会社に12年間勤務後、2011年退職を機に個人事務所「古賀社労士・FPオフィス」を立ち上げる。
客先企業の顧問社会保険労務士としての業務のほかに、ファイナンシャル・プランナー(FP)として、ライフプラン、生命保険、社会保険の相談業務やセミナー講師を行っている。
  
  
2013.03.04
前のページにもどる
ページトップへ