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親は子どもの国民年金保険料を払っているのか?
● 大学生でも20歳になったら第1号被保険者
  受験シーズンの真っ最中であるが、今回は国民年金保険料のことについて触れてみたい。
  ご存じの方も多いだろうが、「20歳以上の日本に住所を有する人」は国民年金の第1号被保険者であり、これには外国人の方であろうが例外はない。
  外国人の方は「難民の地位に関する条約」の批准を契機に1982年(昭和57年)から国民年金に加入するようになったが、大学生については1991年(平成3年)4月より強制加入となっている。
  強制加入であるということは、毎月1万5,000円程度の保険料を支払わなければならない。アルバイトでたんまり稼いでいる学生であれば問題なく支払えるのだろうが、多くの大学生に毎月の支払いを求めるのは無理である。
  では、どうするか?
  「親が払う」または「学生納付特例」を活用する。
  以上の2つに1つの選択だ。
● 学生納付特例の利用度合いは?
  国民年金の第1号被保険者は約1,700万人いる。そのうち15.2%を学生が占めている。そのなかで、保険料の支払いの有無の観点からまとめたのが以下の表だ。
【学生(第1号被保険者)の国民年金保険料納付状況】
学生納付特例者 保険料納付者 滞納者 その他
62.1% 23.4% 12.3% 2.1%
(厚生労働省:平成23年国民年金被保険者実態調査)
  すべてを合計しても、端数の四捨五入の関係で100%にはならない。また、「その他」とは、生活保護世帯などの全額免除者や、30歳未満の人が利用できる若年者納付猶予制度利用者だが、大勢に影響はない。
  これを見ると、第1号被保険者である学生のうち、3分の2近くが学生納付特例を利用していることがわかる。
  「なるほど、やはり学生を抱えている親の懐はきびしいなぁ」と思ってしまうのだが、その親の所得は意外にも高い。
【学生(第1号被保険者)の属する世帯の平均総所得】
学生納付特例者 保険料納付者 滞納者 全体の平均
605.9万円 492.6万円 295.4万円 403.3万円
(厚生労働省:平成23年国民年金被保険者実態調査)
● 子どもの保険料まで払わずとも、手続きは忘れずに…
  文部科学省の学校基本調査によると、大学(短大含む)への進学率は平成23年度で56.7%である。これに専門学校などを含めると、大多数の若者は20歳になっても収入のない学生ということになる。そのスネかじりを養育する親は「それなりに所得はあるが、子どもの国民年金の保険料までは払っていない」ということが見えてくる。
  確かに、私立大学に通ったとすれば、たとえ自宅からでも授業料やその他で年間100万円を超える負担を強いられる。その他に国民年金の保険料(年間18万円程)まで追加で払えというのは、いくら所得が高かろうが厳しいというのが実情なのだろう。
  20歳を超えれば成人であるとはいえ、まだまだ親が金銭的な負担をしているケースは多く、子どものために国民年金の保険料を払ってやるべきかどうか悩んでいる人も多い。
  「みんなはどうしているの?」ということが気になるのが我々日本人だ。大学生を抱える親御さんには学生納付特例の利用割合などの情報を教えてあげたいものだ。
  ただし、学生納付特例には手続きが必要だ。何もしないままでいると「滞納」になってしまう。最初の表を見ていただきたいが、1割強(12.3%)の学生は滞納者となっている。
  万が一、障害状態に該当したとしても、この学生たちには障害年金の受給資格は発生しない。手続き1つ怠ったことで、生涯で数千万円の保障〔障害等級2級であれば、20歳〜65歳までの45年間で3,500万円超(78万円×45年間)〕が受けられないことになる。
  子どもの国民年金の保険料まで親が負担する必要はないにしても、手続きだけは面倒がらずにしておく(手続きの必要があることを教える)ことが大切ではないだろうか。
2013.03.04
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