>  今週のトピックス >  No.2587
企業が押さえておきたい試用期間に関する注意点
● 試用期間の意味
  企業が正社員を採用する際には、きちんと試用期間を設けて雇用契約を結ぶのが一般的である。試用期間とは、採用時には社員としてふさわしいかどうか全てを見抜けないため、一定期間を設け、その期間中に勤務態度や仕事の能力などを観察することで、最終的に社員として雇用するかどうかを判断する期間のことをいう。
  この試用期間は、実はとても奥が深く、関連する法律知識を押さえておかないと大きなトラブルになることもあるので決して軽視してはならない。
● 試用期間中の解雇に要注意
  試用期間については、正社員の解雇に比べて、広い範囲で解雇の自由が認められている。多くの裁判例は、試用期間中の解雇に関し、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と是認されるものでなくてはならないとしている。すなわち、採用当初知ることができなかったような事実が試用期間中に判明し、その者を引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することに客観的合理性が認められるような場合に解雇が有効であるとされているので、それらをふまえて慎重に対応すべきである。
  注意しておきたいのは、試用期間であっても採用後14日を超えて働いている場合、即時解雇はできず、少なくとも30日以上前に解雇予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないということを押さえておきたい。
● 試用期間中でも社会保険・雇用保険は加入しなければならない
  企業側は、就業規則に試用期間について細かくその定義を定めることが必要である。試用期間については、3ヵ月と定めている企業が多いが、労務リスクを回避することを考えれば、6ヵ月にするのも1つの方法である。試用期間を1年とする定めについては、過去の裁判例でも無効となっている。働く側の気持ちになって考えれば、試用期間を長めに定めることは、モチベーションにも大きな影響があるので注意が必要である。
  最後に、試用期間であっても普通の社員と同じような労働時間で働く場合、入社時から社会保険も雇用保険もそれぞれの法律により、加入しなければならない。
  従業員本人やハローワークから指摘を受けて、本来の入社日に遡及して雇用保険の加入日を修正させられることもあるが、実務を担当する人にとっては、結構面倒なことである。また近年、定期的に行われている年金事務所の調査で加入漏れが発覚することも多いので、リスク回避のためにも、日頃からコンプライアンス重視の労務マネジメントを心がけていただきたい。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.03.11
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