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社会保険診療報酬の特例にメスも影響は少ない?!
―平成25年度税制改正大綱より―
● 収入金額が7千万円を超える者を除外
  毎年度の税制改正の議論において見直しの俎上にのぼる「社会保険診療報酬の所得計算の特例」が、会計検査院の指摘を受けて、平成25年度改正においてやっとメスが入る。もっとも、見直しの内容は、同特例の適用対象から、収入金額(自由診療報酬と社会保険診療報酬の合計額)が7,000万円を超える者を除外する内容にとどまり、影響は少なそうだ。
  改正が実現すれば、個人開業医(歯科医)は平成26年分以後の所得税から、医療法人は平成25年4月1日以後に開始する事業年度から適用される。
  社会保険診療報酬の所得計算の特例とは、医業や歯科医業を営む個人や医療法人が、年間の社会保険診療報酬が5,000万円以下の場合は、実際の経費にかかわらず、社会保険診療報酬の金額に合わせた4段階の概算経費率による経費を認めるもの。社会保険診療報酬が2,500万円以下なら72%、2,500万円超3,000万円以下なら70%、3,000万円超4,000万円以下なら62%、4,000万円超5,000万円以下なら57%の概算経費率が認められる。
● 特例措置は基本的に維持することが適当と厚労省
  この特例に対して会計検査院は平成23年10月、(1)多額の自由診療報酬があっても社会保険診療報酬の金額が5,000万円以下なので特例を適用している、(2)実際の経費率と概算経費率に開きがあることで多額な措置法差額が生じている、(3)特例適用者のほとんどが実際経費を計上した上で、概算経費と比較して有利なほうを選択している、と指摘。財務省と厚生労働省に対し、同特例の適用実態の検証と検討を求めていた。
  これを受け厚生労働省が2012年11月に公表した実態調査結果では、特例措置の適用者には、高齢者層や社会保険診療報酬2,500万円以下の小規模医療機関が多いことや、特例が廃止されると「事業の継続が困難」とする者が高齢者層や小規模医療機関層では約5〜6割と多いこと、また、特例措置が小規模医療機関等の事務処理負担の軽減を図る制度として有効に機能していることなどから、特例措置は基本的に維持することが適当とした。
  一方で、適用者の中には、多額の自由診療報酬を得ていることにより必ずしも小規模な医療機関とは言えない者も存在することが明らかになったことから、自由診療報酬も含めた収入額が一定以上の者を適用対象から除外する見直しを行うとしていた。
  そこで、平成25年度税制改正では、医業等の収入金額が7,000万円を超える場合は、特例措置の適用対象から除外するという見直しが行われるわけだ。
※  「平成25年度税制改正大綱」については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.03.11
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