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協会けんぽの保険料、平成25年度は据置きに
● 今年度は据え置くも、赤字体質の構造だけに…
  協会けんぽ(全国健康保険協会)の健康保険料率は、平成21年度(8.2%)から昨年度(10%)まで3年連続で引き上げられましたが、この4月から適用される25年度の各都道府県の協会けんぽの保険料率は、24年度と同じ全国平均10%に据置きとなりました。ちなみに、都道府県別に保険料率を見ると、最高は佐賀県の10.16%、最低は長野県の9.85%です。同様に介護保険料率も据え置きとなり、1.55%(全国一律)のままです。
  今回は保険料の値上げは避けられましたが、はたして協会けんぽの収支はどうなっているのでしょう。同協会の平成25年度予算案にもとづく見込みを見てみると、支出8兆6,253億円のうち、おもなものは加入者の医療費等が全体の51.6%、高齢者の医療費を支えるための拠出金等が40.4%、加入者が病気等で職場を休んだ際の手当金等が6.1%となっています。対する収入は8兆5,777億円で、そのうちの85.6%は保険料収入で賄われていますが、不足分のほとんどは国庫補助金(税金)等(14.2%)で補われているのが現状です。
  また、保険料負担と給付の関係は、被保険者1人当たりに換算(年間)すると、保険料の負担は約36.8万円であるのに対し、保険給付等は約43.2万円となります。保険給付等には保険料のほかに国庫補助金(税金)等約6.2万円が充てられています。
  この保険給付等には現役世代の加入者のための医療費だけでなく、高齢者の医療費を支えるための拠出金等約17.5万円が含まれており、約4割を占めています。伸び率で見ると、加入者のための医療費よりも、高齢者のための拠出金の方が近年大きく伸びています。
● 財政構造を変えなければ値上げは必至
  協会けんぽが財政面で厳しい理由として、近年、医療費支出(1人当たり保険給付費)の伸びが保険料収入の基礎である賃金の伸びを上回っていることがあります。また、昨今の不況の影響により、中小企業等で働く方々の賃金の下落に伴い、保険料収入が落ち込んでいることも挙げられます。加えて、高齢者医療への拠出金が年々増大しており、これらが過去3年間の保険料率引上げの大きな要因となっています。
  協会けんぽはもともと財政基盤が脆弱であるにもかかわらず、赤字体質であるため、現状の財政構造のままでは今後も厳しい状況が続くものと考えられます。平成25年度の保険料率は据え置かれますが、協会けんぽでは、「制度改正が行われないまま、現在の平均保険料率10%を据え置いた場合、29年度には2兆3,700億円もの累積赤字となる」と試算しています(「全国健康保険協会(協会けんぽ)について 平成24年11月」より)。
  厚生労働省でも、協会けんぽの健康保険料率は平成37年時点には11.1%程度、介護保険料率は同3.1%程度になると試算しています。そして健康保険と足並みをそろえるように介護保険においても、第1号被保険者の保険料が現在の月額5,000円から平成37年には月額約8,200円に上がるとしています(「社会保障に係る費用の将来推計の改定について」より)。
  社会保障制度を維持していくためには、給付抑制や負担増を避けることができないのかもしれません。
  
半田 美波(はんだ・みなみ)
社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。
  
  
2013.03.18
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