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乳がんの「乳房再建術(インプラント)」が健康保険適用に!?
● 乳房再建のインプラントが薬事承認
  「乳がんの手術によって失われた乳房を取り戻したい」――身体面や精神面などのQOL向上が期待できる「乳房再建術」とは、乳がん切除術により失われた乳房の外見を、手術前の状態に近くなるよう再建する手術のことです。
  現在行われている乳房再建術はおもに2種類あって、1つは自分のからだの組織(自家組織)を移植して乳房を再建する方法、もう1つは人工物であるシリコンインプラントなどを用いて乳房を再建する方法「人工乳房手術」です。前者は健康保険の適用となっていますが、後者は保険適用にはなっていません。
  多くの点で利点のある人工乳房による再建術についても健康保険の適用にしてほしいと、乳がん患者会をはじめ多くの方が長年署名活動を行って、厚生労働省に早期承認を求めてきました。
  こういった声を受け、2012年9月に、アラガン・ジャパン社のブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)が日本で初めて薬事承認を取得しました。また、人工乳房再建術の際に乳房周辺の皮膚及びその他の組織の拡張・伸展の目的で使用される同社のティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)も承認されました。
  今後、この両者の乳がん治療に対する使用が保険適用となるための承認条件として「関連学会と連携の上、実施施設基準、実施医基準を設け、乳房再建術または乳房増大術に関連する十分な知識と経験を有する医師により、同術の実施体制が整った医療機関において本品が使用されるよう、必要な措置を講ずること」などが求められています。関連学会では、実施施設基準、実施医基準などの使用要件基準を整備し、承認条件を満たすよう手続きを進めています。
● 自家組織による乳房再建とインプラントを用いた乳房再建
  自家組織による乳房再建は、腹部や背部の組織を使って再建しますが、長時間の手術が必要になり、組織を採取した腹部や背部に傷痕が残ります。また、回復までに時間がかかり、入院期間も少し長くなるため、1か月ぐらい休暇を取らなければならないという問題もあります。治療費については、健康保険の対象であり、インプラントに比べると経済的な負担が少なくてすみます。
   インプラントを用いる方法は、自家組織による乳房再建に比べて傷が小さく目立たず、再建する乳房以外の場所に傷が残ることはありません。手術が簡単で、短い手術時間で済み、2、3日ぐらい休んですぐに社会に復帰できるという大きなメリットがあります。ただし、インプラントはあくまで人工物ですので、術後のカプセル拘縮(胸が硬くなり、違和感や場合によっては痛みが生じる)や合併症などが発生するリスクがあります。治療費については、現在は健康保険が使えないため、自費診療で100万円前後かかるといわれています。
● 恩恵が大きい人工乳房再建術
  インプラントによる乳房再建は、費用面や時間面からなかなか使えないのが実態です。乳がんの罹患年齢はどんどん若年化し、仕事をあまり休めない人や乳幼児を育てている人が乳がんになってしまった場合、再建術に費用も時間もあまりかけられなかったりします。インプラントが保険適用になると、今までより少ない費用で、早期に社会復帰できるようになります。乳房を失った女性にとって、恩恵は大きなものとなるでしょう。
2013.03.18
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